いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



君のための物語 (電撃文庫)

「君のための物語」水鏡希人(電撃文庫
君のための物語 (電撃文庫 み 13-1)

華やかさとも成功とも無縁で、幸福や繁栄は手に入らない対岸のもののように感じられる、そんなひとりぼっちの冬の寒い夜。ひょんなことから死にそうな目に遭った私を救ったのは、奇妙で不思議、そして美しい「彼」……レーイだった。
出会いと喪失をいちどきに運んだ不思議な力、老婦人の昔日の想いが込められた手鏡と櫛、天使をも魅了する声を持つ女帝とも称された歌姫、そして「彼」を追う魔術師――私は彼にまつわる不思議な事件に巻き込まれ、そして――?

第14回電撃小説大賞<金賞>受賞。「彼」と「私」をめぐる、数奇な運命を綴った物語。

小説化志望の青年が魔術師の「彼」に出会ってから起こった、いくつかの不思議な出来事。


電撃文庫お得意のせつなくて優しい物語・・・なんだけど、何このライトノベルに似つかわしくない雰囲気は。
主人公の「私」の悲観的な割りにどこかのんびりとした性格、ヨーロッパの下町風の舞台、少年少女皆無の登場人物がライトノベルらしからぬ落ち着いた雰囲気を漂わせている。
連作短編形式で一つ一つの話もせつなくて優しい良い話だけど、全体を通して一人の青年の成長譚として一本筋が通っているのがまた良い。話数が進むにつれ色々な人たちに触れていく中で人間として成長していく「私」の姿に心打たれる。
派手な事は全く起きない・・・というか相当地味だけど、静かにゆっくり心に沁みるいい話。