いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



有川夕菜の抵抗値 (電撃文庫)

「有川夕菜の抵抗値」時田唯(電撃文庫
有川夕菜の抵抗値 (電撃文庫)

「私は貴様らのような連中が大嫌いだ」
挨拶の第一声から級友たちをドンびかせた転校生・夕菜には、人には言えない秘密があった。彼女は感情が高ぶると身体から電気を発してしまう特殊体質だったのだ。
その体質故、過去に大切な人をケガさせていた彼女は、誰も自分に近づかぬよう虚勢を張り続ける。だが、なぜかこの高校には夕菜にちょっかいを出してくる変人ばかり。特に生徒会長の末長は、しつこく夕菜に言い寄るが……。
孤独な転校生の少女とちょっと壊れた高校生たちが織りなす、笑って泣けて元気が出る癒しのストーリーを、ドタバタ風味でお届けします!

特異体質のために人間に怯えきった猫のような女の子を何とかして手懐けようとする話。
夕菜のモデルは美琴ですね、わかります。


いやー青い。
それぞれの傷を抱えた夕菜、末長、千春のむき出しの感情のぶつかり合いは青臭いとしか言いようがない。
特に会長の末長は読んでいて痛々しいほどの不器用さ。誰か彼に“押し”以外の手を教えてやってくれ。
そんな少年少女が主役な物語だけど、裏方である大人達の姿も丁寧に描写されているのが特徴的。校長、教頭、母の会談の長さと内容の濃さには少し驚いた。
そしてその大人達が文句なしでカッコいい。夕菜にとって末長や千春との出会いは幸運だったけど、それ以上にこんな大人達が周りにいたことが幸運だったと思わせるほどにカッコよかった。理想で強力な正論(校長)と相対する教頭、娘への想いで校長を黙らせる母、彼らの傷を理解し出すぎずそっとアシストしていく長峰先生。おまけでなんだかんだで空気が読める校長も。
青春一直線な少年少女たちの話も良かったけど、それ以上に彼らを支える大人達が印象に残った。世の中こんな大人ばかりならいいのにね。