小劇団「シアターフラッグ」――ファンも多いが、解散の危機が迫っていた……そう、お金がないのだ!! その負債額なんと３００万円！ 悩んだ主宰の春川巧は兄の司に泣きつく。司は巧にお金を貸す代わりに「２年間で劇団の収益からこの３００万を返せ。出来ない場合は劇団を潰せ」と厳しい条件を出した。
新星プロ声優・羽田千歳が加わり一癖も二癖もある劇団員は十名に。そして鉄血宰相・春川司も迎え入れ、新たな「シアターフラッグ」は旗揚げされるのだが……!?
意見の違いで劇団員が半数以上が去り、尚且つ負債３００万を抱えてしまった劇団「シアターフラッグ」再建の物語。
一応多人数視点ではあるが、司６：千歳２：他２くらいの割合で、演劇とは無関係な司から見たシアターフラッグや演劇の世界が話の中心。
恒例の甘々展開が無い変わりにお兄ちゃんが弟に甘々とは。流石は甘さに定評のある有川作品。
大の大人にこの表現はどうかと思うのだが、兄がかなりの萌えキャラ。
巧に演劇の世界から足を洗ってもらいたいはずなのに、悪役を演じ劇団員に嫌われてでも頼りないがかわいい弟のために頑張ってしまう司。なんというツンデレ。しかもデレの部分が巧本人や女性劇団員にはバレてしまっているのが憎めない。同じく下に甘い兄の身としては微笑ましいと同時に軽く苦笑いも起こさせる司の言動の数々が楽しかった。
また、多くの人には未知の世界であろう劇団を知る物語としても面白い。
夢を追っている人ってこんな感じなのかな？と思わせる子供っぽいけど熱い劇団員達のキャラクターや、時にコミカルに時にシビアに描かれる劇団の実状など、あまり演劇に興味が無くても物語にすんなり入り込めるとっつきやすい表現は流石。
ただ、最後まで読みきった時の初めの感想は「えっ？ ここで終わっちゃうの？」だった。
いつもの甘さが無いこともあるが、彼らの人間ドラマが始まったばかりのところで終わってしまっているので、物足りなさともどかしさが残った。
シアターフラッグの行く末はもちろん、折角の多人数視点なのだから今回はあまり無かった劇団員の視点も読みたいし、なにより石丸⇒牧子⇒巧⇒千歳→司という綺麗に一方通行な関係がどうなっていくのか気になってしょうがない。
続編出ますよね？
