いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「青雲を駆ける」肥前文俊(ヒーロー文庫)

青雲を駆ける (ヒーロー文庫)
青雲を駆ける (ヒーロー文庫)

現代日本で希少な野鍛冶の技を持つ男・エイジが異世界に転生。そこは貧しく、技術は未熟な異界だった。エイジは美しい未亡人のタニアと一緒に暮らす。近所に住む猟師や大工などの村人に助けられながら、鍛冶師として働くため、エイジは村の試練を受けることになる。何一つ設備も材料もない状態から、三ヶ月で作品を作り上げ、村の役に立つと認めさせる必要があった。エイジは村の一員として認められ、精力的な活動を続けていく。しかしエイジの技術は領主から目をつけられてしまう。生きて帰ってこられない、と忠告を受けながらも、労役という義務を果たすため、エイジは単身領主の町に向かった――。

ヒーロー文庫。渋いタイトルと戦わなさそうなあらすじに惹かれて購入。



現代の鍛冶屋の青年が異世界に飛ばされる話。
流行りの異世界召喚ものだが、本作は魔法は無ければ便利アイテムもない、主人公の持つ知識の中で出来ることしかやっていないのが特徴。そして、この主人公・エイジが実に真面目な青年で「コツコツと」や「淡々と」という言葉がよく似合う。そんな彼の性格に一足飛びに結果を求めずに準備段階をしっかり描いているのが良いところ。
もう一つの読みどころは、タニアとの関係。
二人ともいい大人で、お互いにベタ惚れなので大人のイチャイチャが読める。当然具体的な描写は無いが、台詞は意外と直接的でスキンシップも多めでニヤニヤ高し。
一方、どこまでも「淡々と」なので盛り上がりには欠ける面も。最後に起こった問題も拍子抜けするほどあっさり片付いてしまって物語に起伏がない。短いスパンで話を切るネット小説の宿命か。
そうなると薀蓄小説として楽しみたいところなのだけど、そちらは少々物足りない。
戦いなし派手さなし若さなしと、ここまで若年層を度外視にした作りにするなら、鍛冶等の技術面の説明はもっと専門的でもよかったかも。
地味さはかなり自分好み。これで薀蓄小説として楽しめれば申し分なかった。