いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「光刃の魔王と月影の少女軍師」桜崎あきと(HJ文庫)

光刃の魔王と月影の少女軍師 (HJ文庫)
光刃の魔王と月影の少女軍師 (HJ文庫)

軍事大国・アルマジーア帝国に侵攻されたエルセリア王国。王国が誇る「六魔将」の筆頭で卓越した魔術の使い手リクトは反撃のため帝国に潜入した際に、帝国の軍師を務める天才少女・アルシェと出会う。戦争の裏に潜む陰謀を知った二人の英雄は、二つの祖国の運命を切り拓くため、手を結び陰謀に立ち向かう。新たなる王道ファンタジー戦記、堂々開幕!!

第8回HJ文庫大賞大賞受賞作



……大賞?
うん、まあ、世界観は良かった。
独自の神話に基づいた殺伐とした世界情勢に、三種の魔術が存在する魔法大系。そして、少々説明過多な部分もあるが、その魔術のフルに使った見栄えのする戦闘シーン。世界観の構築に対する熱量が窺える。
なのに、その舞台でやっているのがラブコメっぽい何か。
まず目立つのが、主人公を巡って常時発情している女性陣。本当に見境が無いので、潜入シーンでも緊張感の欠片も無い。
それに、戦記ファンタジーを謳いながら、戦略なんてものは冒頭に爪の先ほどあるだけで、ほとんどが大将同士のタイマン勝負。戦記どこ行った?
また、交戦中でも真実をバカ正直にそのまま伝える将に、その言葉をそのまま信じる敵将と、どっちもどっちの単純さ。戦記以前に戦争どこ行った?と聞きたくなるやり取りの数々には苦笑するしかない。
なまじ舞台がしっかりしていただけに、底が浅い登場人物たちがクラスの出し物レベルの演劇でもやっている様に感じた。ラブコメをしようとしてそうなっているのではなく、至って真剣に書かれている風なのが痛い。
世界観はしっかり考えられているのに、どうしてストーリーとキャラクターはこんなにも薄っぺらいのか、そのチグハグさに首を捻る作品だった。