いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) 勇者を送り迎えするだけのカンタンなお仕事です」加藤雅利(このライトノベルがすごい!文庫)

【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) (このライトノベルがすごい!文庫)
【急募】賢者一名(勤務時間は応相談) (このライトノベルがすごい!文庫)

何の変哲もない退屈な日常。その陰で、「勇者」と呼ばれる存在は、密かに活動を続けている。人類の平和を脅かすべく魔界からゲートを開いてやってくる魔物たちを、人知れず退治しているのだ。これは、「賢者」の血筋に生まれたがゆえに、ちょうど同じクラスにいた女子高生勇者のサポートをすることになった、一人の平凡な男子高校生の物語である――。
第5回『このライトノベルがすごい!』大賞・栗山千明賞に輝いた、じわじわ系日常ファンタジックコメディ、ここに登場!


これは良い勇者ですね。
無口な女勇者・ミカゲが可愛い。
台詞はほぼ一言、長くて二言三言というヒロインとは思えない無愛想なのに、時々出てくる言葉以外のちょっとした仕草で表される感情が可愛らしい。表面はクール系なのに内面は子供みたいに好奇心旺盛だったり可愛いもの好きだったりするギャップもグッド。
後は…………すまん、もうない。
設定が説明不足なら状況も説明不足で置いてけぼり感がかなり強い。
やたらと市役所が万能で、面倒な説明は大体そこに逃げている感じ。出てくるモンスターの場所と種類を何故か完全に把握しているし、これ市役所が黒幕じゃね? 多分違うんだろうけど。
また、勇者とその仲間以外の描写があまりにも無さすぎ。勇者御一行はモンスターが町に入ったら大変だと言っているのに、その町の人の反応が無いので、彼らだけ異世界かゲームの中に居るのような状態になっている。現実世界にモンスターが出てくるという要素が全く生かされていない。
あと気になるのが、主人公の言動のチグハグさ。
台詞は慌てた内容なのに、行動が淡々と落ち着いていて危機感はゼロ。シュールなコメディがやりたかったのか、シリアスも入れたかったのか、判断しかねる中途半端さ。
設定にしろ作品の方向性にしろもっと詰めて欲しかった。



話の内容とは関係ないけど、挿絵は良かった。
表紙のミカゲの肉付きのいい感じが素晴らしい(おいおっさん
デフォルメ絵も可愛いし、口絵だけでなく挿絵にも背景も小道具もしっかり描いてある。
キャラの絵しか描けない奴がいっぱいいる中で、こういう丁寧な仕事には好感が持てる。