いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「廃皇子と獣姫の軍旗」田代裕彦(ファミ通文庫)

廃皇子と獣姫の軍旗 (ファミ通文庫)
廃皇子と獣姫の軍旗 (ファミ通文庫)

《黒狐》と怖れられるアルガント帝国の皇太子ウィルフレド。獣の半身を持つ亜人族との一戦に勝利した彼は、唯一人、人の姿をした《獣姫》を捕縛し帰国する。しかし凱旋した彼に《偽嫡》の嫌疑がかかり、喝采から一転、ウィルフレドは罪人となってしまう。そんな彼の前に現れたのは《獣姫》ククル。先んじて解放していた彼女に救われたウィルフレドは、彼女と共に亜人達の元へ身を寄せるが――。獣の姫と大帝国に牙を剥く、本格ファンタジー戦記登場!


継承者争いで国を追われた王子が生きる為に戦う戦記ファンタジー
頭脳明晰な軍師タイプの王子ではあるが、戦争の描写はそれほど濃くなく、戦記ものというよりは不遇の王子が下剋上をするという側面が強い。
その主人公、王子・ウィルフレドがなかなかのいい性格、いいキャラクター。
考えることが得意でその思考を読者に提示してくれる作品は基本的に読んでいて楽しいのだけど、ウィルはそこにプラスαがあるのが面白い。中でも先読みの才能がピカイチで、それに対して事前に打つ策が意地悪、もしくは性格が悪い。思わず苦笑が出る王子らしくも主人公らしくもないやり口が素敵。それでいて非道に成りきれない優しさと、知的好奇心には貪欲で未知のものには子供のような振る舞いをしたりするのが憎めない。偽善者ならぬ偽悪者と言ったところ。少々朴念仁が過ぎるところが玉に瑕だが、まあラノベの主人公だからしょうがない。
また、ヒロインの質と量を兼ね備えているのが魅力。
もののけ姫風メインヒロイン(チョロインの気あり)に、ケモミミ嫁(アホの子かわいい)、金髪縦ロール幼馴染み(有能でぞっこん)とそれぞれに個性がありつつ、ちゃんと住み分けが出来ている。
どうしても説明が多くなるシリーズものの1巻だけど、キャラクターの良い作品はそれでも面白い。
物語としては獣姫と出会って亜人の信頼を勝ち取る第一歩と言った所なので、これからどう反旗を翻していくのか、次以降がとても楽しみ。