いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「活版印刷三日月堂 海からの手紙」ほしおさなえ(ポプラ文庫)

([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)
([ほ]4-2)活版印刷三日月堂: 海からの手紙 (ポプラ文庫)

小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。物静かな店主・弓子が活字を拾い、丁寧に刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い……。
活字と言葉の温かみに、優しい涙が流れる、大好評シリーズ第二弾!

活版印刷所を舞台にした短編連作小説、第二弾。前の話の客が作ったものを見た人が次の客になるという形で話が繋がっていく。



偶然立ち寄った店で悩みや問題を解決する小説は数あれど、やっぱりこのシリーズは一味違う。
職種が活版印刷なこともそうだけど、一番は店主の弓子さんがまだまだ手探りの見習いなこと。弓子さんと一緒に考え、意見を出し合い、一緒に何か新しいことにトライしていくそのスタンス。ただ受け身で解決してもらう話よりも悩みが晴れる実感あったり、何か一つ成長した様な気になれるのがとても良い。
また、その話の主人公(=客)の亡くなった家族が出てくる話が多く、すでに両親とも祖父母とも死別している弓子さんの境遇ともリンクして「泣ける話」が多いのも特長。故人が遺したかったものを、後から感じたり紐解いたりすることで、悩みに解決したり嫌いだったその故人に向き合ったりするストーリーが何度も涙腺を刺激してくる。死と言うのは最も単純で強烈に涙を誘ってくるものなので、ちょっとずるいなと思うところもあるけれど。
思いの外早く2巻が出たので3巻を期待していいのだろうか。現在、天涯孤独な弓子さん本人の話も読みたい。