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「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン XII」宇野朴人(電撃文庫)

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXII (電撃文庫)
ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXII (電撃文庫)

カトヴァーナ帝国、キオカ共和国、そしてラ・サイア・アルデラミンによる三国会談が、いよいよ開幕した。
キオカの執政官アリオ・キャクレイや、ラ・サイア・アルデラミンのイェナーシィ・ラプテスマ教皇といった一筋縄ではいかない面々に、一見場違いとも思える科学者アナライ・カーンが加わることで、会談は思わぬ方向へと転がっていく。
その中で、宿敵同士のイクタとジャンは、まるで子供のように純粋に自らの感情をぶつけあい、激しく火花を散らすのだった──。
これまで語られることのなかった世界の謎が、ついに明らかになる衝撃のXII巻!!

ぶったまげた。
第一章から第三章まで、三段階でこれまでのアルデラミンと全く違う顔を見せてくれた。12巻まで来てこんな引き出しが出てくるなんて。


注)今回はいつにも増してネタバレ感想です。


第一章 三国会談は、アナライ博士が会談を引っ掻き回したり、イクタとジャンの初対面で子供の喧嘩をしたり。傍から見てる(読んでる)分には楽しいけど、当事者は苦笑いするしかないんだろうな。個人的にはアリオのやり口がイクタによって解説されるところが最も興味深かった。あの子もか、何となくそんな気はしていたけど。
と、ここは戦争していない状態が新鮮だったけれど、まだまだこれまでの延長線上。第二章 神の試練から毛色がガラッと変わる。
神の試練とは、幾何学問題だった。……なんだって?
姫さまの解法とか幾何学問題の思考を読むのは理系の自分には楽しかったけれど、数学嫌いの人が読むのはちょっと辛いかも。それと問題を文章で説明するのに苦戦していた印象がある。折角ライトノベルという絵を入れやすい媒体なんだから図解すればよかったのに。
またここは、滑落で二人きりになったイクタとジャンの会話がハイライト。ここでイクタ打ち込んだ楔がジャンの今後にどう影響を与えるか、この先が楽しみ。
そして第三章 ねじ巻き精霊。読者はSFの世界へ飛ばされる。
かなりトンデモな存在なのにあまり脚光を浴びてこなかった『精霊』の存在。タイトルの意味。そしてこの世界の成り立ちに至るまで、今まで謎のまま伏せられていたものが全て解き放たれる衝撃の第三章。
いきなりの新事実に戸惑いながらも、どのピースも綺麗にはまっていく様子に納得せざるを得ないというか。特にタイトルの伏線回収が綺麗な事に驚く。初めの構想からこういう世界だったってことだよね。はー。
さて今後は、
世界観も作中人物たちの考え方も一度大きく破壊していったけど、イクタの言った「僕たちはまず、この現代を生きなければならないんだと」に集約されていくのだろう。
明かされた真実が今後の戦況、そして結末にどう絡んでくるのか。終盤を迎えたシリーズの今後がますます楽しみだ。