いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「戦塵の魔弾少女 魔法強化兵部隊戦争記」 雨澄碧(このライトノベルがすごい!文庫)

戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) (このライトノベルがすごい!文庫)
戦塵の魔弾少女(バレット・ガールズ) (このライトノベルがすごい!文庫)

内戦状態の独裁国・バラトルム聖帝国。廃工場に身を寄せ合い生きていた戦災孤児のリッカと仲間たちは、ある日、とある施設へと保護される。しかし、そこは洗脳と身体改造によって人知を超えた能力を有す魔法強化兵を生み出す悪魔の強制収容施設だった。魔法強化兵へと改造された少女たちは独裁者の兵として硝煙弾雨の血みどろの戦場へ送られる。奪われた自由。奪われた心。正義なき戦争の果てに少女の瞳に映る世界とは――! 「魔法強化兵部隊、戦闘開始!」衝撃のハード・バトルが幕を開ける!


オープニングの戦闘での無駄に詳しい銃火器の説明に、その後のロリロリしい魔法少女候補たちの様子。これは作者の好みを思う存分書き綴った趣味の本だろう。という読み始めだったのだが、、、
その後は、あらすじに「洗脳と身体改造によって人知を超えた能力を有す魔法強化兵を生み出す悪魔の強制収容施設」とあるように、非人道的な行為が平然と行われる100%シリアスな展開に。
しかも、その洗脳過程も本番の戦闘も、無駄な煽りはなくごく淡々と語られていくため、それがかえって生々しい印象を与える容赦のない描写が目を引く。
謳うのは戦争の悲惨さというライトノベルらしからぬ重いテーマである一方で、魔法を使うことで少女を戦場に立たせる正統性を持たせ、兵士を少女にすることで悲劇性を増幅させるのは、ライトノベルでしか使えない手法だとも思う。
出てくる感情は遣る瀬無い、居た堪れないなどの痛みばかりだが、中東情勢やウクライナ情勢、遠い世界の出来事でしかないニュースを少し身近なものに感じさせる、考えさせられる作品だった。