いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「私の心はおじさんである2」嶋野夕陽(PASH!ブックス)

私の心はおじさんである 2 (PASH!ブックス)

謎の赤子「ユーリ」を救出し【神聖国レジオン】に辿り着いたハルカ達。ダークエルフを破壊の神の使徒と思い込む学生達に絡まれてしまう。子供相手の模擬戦でハラハラしていたハルカだったが、なぜかしもべ(?)ができることに!
さらに、面倒な貴族のお坊ちゃんから依頼を受け、新たな街を目指す一行の目的地は世界中の強者がひしめく武闘祭!曲者揃いの大会で、ひとり闘いに挑むアルベルトは勝ち残れるのか!?
人間関係を諦めたおじさんが、新しい自分として異世界で心を成長させていく、歪だけど王道な冒険の物語第2弾!!


四十路で独身の冴えないおじさんが、ダークエルフとして異世界に転生する物語、第二巻。
一巻から間が空いたのでもう出ないのかと。無事に出て良かった。
ストーリーは護衛任務途中に寄った壊滅した村で赤子を保護した後。神聖国レジオン到着から隣のドットハルト公国での武闘祭の予選まで。おじさんが多くの出会いと別れを経験する旅のお話。
主人公のハルカは異世界転生ものらしく、外見は超絶美人で戦闘能力は極めて高いダークエルフなのだけど、読んでいるとそのことを頻繁に忘れる。なにせ中身が自己肯定感が薄い善良な小市民という実に日本人らしいメンタルの持ち主なので。
そんな彼(彼女?)が旅で出会いと別れ、平和な国ではありえない経験を繰り返しながら、仲間たちのこと、冒険者という職業、人の命のこと、一つ一つに悩んで飲み込んで考えて答えを出していく。その過程が丁寧に描かれるので、同じ小市民として共感できる場面が多い。
その悩み多き美女(おじさん)を引っ張ってくれる仲間たちが気のいい若者たちなのがまた良い。
実直な少年アルが叱咤し、元気少女のコリンが宥め、敏い少年モンタナが寄り添う。でもある時は逆にハルカが中身は年長者らしい気遣いを見せて若者たちの手助けをしたり。お互い助け合うというより、誰かが困っていたら助けるのが当たり前、四人でいるのがごく自然な空気が出ている。そんな気持ちのいい気の合う仲間たちとの旅が本当に楽しそう。
所謂なろう系は日頃の鬱憤を晴らす自己顕示欲の塊みたいな物語ばかりの中、外側のチートスペックを楽しい旅の煩わしい障害を取り除くためだけに贅沢に使って、純粋に旅と第二の人生を楽しんでいる感じがとても心地いい。
2巻も面白かった。次は師匠との出会いがメインかな?