いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「VR浮遊館の謎 ―探偵AIのリアル・ディープラーニング―」早坂吝(新潮文庫nex)

VR浮遊館の謎:探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫 は 72-4)

人工知能探偵・相以(あい)と助手の輔(たすく)は、世界初のフルダイブ型VRに挑戦! あらゆるものが浮遊する館で、相以は魔法使いに変身! 早速、犯人当てゲームの最速クリア法を提案する。「一人ずつ殺していけばいいと思います!」ゲームとは思えない生々しい死体の出現、迫りくる殺人鬼の魔の手。はたして二人は浮遊館の謎を解き、無事に脱出できるのか。急転直下の推理バトル、新感覚ミステリ。


人も物も浮遊する館を体験できるVRゲームで犯人を見つけ出す推理勝負。フルダイブVR空間で身体を得た相似が大暴れな探偵AIシリーズ第四弾。
シリーズ開始当初に比べ進化が著しいAI業界。SFなのに現実に追い抜かれはしないかと、シリーズ存続大丈夫か?なんて思いながら読み始めたが、杞憂だった。
今回もぶっ飛んだトリックと結末で度肝を抜かれた。AIの進歩どうこうは全く気にならなくなる衝撃← このシリーズ、第三弾「四元館の殺人」からSFトンデモトリックメインにシフトチェンジした感がある。
ミステリとしては、仕掛け人の似相が「ヒントはいっぱい散りばめたからフェアでしょ」と言わんばかりだったけど、この世界がどれほど技術が進んでいるかを判断する材料がないから何とも、と言ったところ。いやまあ、今でも成功率とお金と秘密裏に実行可能かどうかに目を瞑れば、不可能ではないのかもしれないけど。
でもいいのだ。スケールの大きいぶっ飛んだトリックとどんでん返しがエンタメとして最高に面白いから。細かいことは気にしない。
ちなみに心配していたAIの進歩は、
時々有能で時々ポンコツな探偵AI相似と犯人AI似相。判別可能範囲内なら有益な答えを素早く出すけど、それ以外は頓珍漢な答えを返す現代のAI。似ていると言えば似ている。現代が作中に追いついてきた……のか? 但し、愛嬌に関しては遠く及ばないが。身体を得た相似が輔を抱きしめるシーンの尊さとか。ツンデレ気配の似相の可愛さとか。
ミステリと言われる「お、おう」ってなるけれど、キャラクターSF小説として、SFエンタメ小説として面白かった。