いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「依頼は殺しのあとに」秋目人(メディアワークス文庫)

依頼は殺しのあとに (メディアワークス文庫)
依頼は殺しのあとに (メディアワークス文庫)

勤務中に血を吐いて倒れるまでブラック企業で働いていた青年・南は、退職後、「楽をして生きる」をモットーにして、裏社会の団体から小金をせびって暮らしていた。
ある日、霊感商法の団体から金をせしめてホクホクしていたところを、シマを荒らされ怒っている暴力団に囲まれる。震えながら謝る南だったが、「安心しろ。殺したりはしない。死なない程度に痛いだけだ」と言われ、絶望する。
だが、その窮地を一人の男に救われる。冴えない風貌の彼は、南を勧誘するのだった。
「兄ちゃん、掃除って興味ある? にこにゃんハウスクリーニングで働く気はないか?」

秘密裏に殺人現場の遺体も部屋も掃除する清掃業者の話。
そんな、とんでもなく重くダーティーな話でありながら、会話は軽く登場人物たちの振る舞いもコミカルでサクサク読める軽さがある。中でも、主人公・南を勧誘した五ツ瀬が良いキャラクターだった。怖い人から始まり、お茶目な面を見せたり面倒見の良さを見せたり、噛めば噛むほど味が出るおっさんキャラ。
と、前半はブラックだがユーモアのある話として読める。
しかし、仕事内容や登場人物の関係が大体分かってくる中盤になると、一つの依頼をきっかけに一気に緊張感が増す。それも、事件の関係者それぞれの事情が複雑に絡むミステリ調に。
ここからは推理は冴えるが行動力が冴えない南の行動に一喜一憂。南の論理的思考を読むのは面白く関心もするのに、そこから上手い手を導き出せないのでヤキモキ感はハンパない。
ラストはハッピーだけどハッピーじゃない、題材に合った納得の微苦笑な終わり方で読後感もスッキリ。
かなり異質な題材だったけど面白かった。前半と後半で二度美味しい作品だった。