いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



福音の少年―虹のウロボロス (徳間デュアル文庫)

福音の少年 虹のウロボロス加地尚武徳間デュアル文庫
福音の少年虹のウロボロス―Good News Boy (徳間デュアル文庫 か 7-3)

謎の転校生、曲都光こと闇の王子の来訪は、ホムンクルスのアナを人間にしたばかりか、魔法使いだとわかったばかりで、いまだ修行中の男子中学生・御厨恵を魔法使いの最高位《ウィザード》にしてしまった。自分の意志とは関係なく、大変な立場におかれた恵は、国連での演説で世界の禁忌に触れる発言をしてしまう。それは世界にくすぶっていた火種をおこすことに。彼は、自ら引き起こした事態の収拾をはかろうとして、誤って戦闘中の現場へ飛んでいってしまった。ますます急展開な第3巻! 受難続きな恵の運命は?


一気に来たなー
1巻から2巻へのスケールアップにも驚いたけど、2巻から3巻はそれ以上。突如世界の頂点に立たされ、自分の蒔いた種ではあるが世界の混乱を自ら収めに行くことになるなんて、1巻を読んだ時には想像も出来なかった展開だ。
今回は恵の成長譚。自分の置かれた状況に全くついていけないヘタレとしか言いようがない状態から、最後は不器用ながら自分の信念を貫こうとする姿まで、運命に翻弄され葛藤しながらも少しずつかつ劇的に変わっていく恵。その怒涛の展開とスケールの大きさ、そして成長していく恵の姿に物語に引き込まれ読み出したら止まらなかった。
また、それでいて御厨家のホームコメディ部分も小出しではあるもののしっかり収録。成長していく恵を見る(といっても主にTVだが)両親とエリカの心境が短いながらも丁寧に描かれているのが嬉しい。ただ、その中でアナの影が薄いのが気になった。恵が中心の話なのである程度は仕方がないと思うが、もうちょっとアナの成長について触れて欲しかった。第4章でテレビに抱きついていたアナと、第7章で典子(恵の母)に泣きついたり、アメリカから帰ってきた恵を迎えた時のアナはとても同一人物には思えない。でもこれで精神的にエリカと同じ土俵に立てたような気がするし、恵も帰ってきたので次からの恋愛模様が楽しみ。