いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



雪蟷螂 (電撃文庫)

「雪蟷螂」紅玉いづき電撃文庫
雪蟷螂 (電撃文庫)

涙も凍る冬の山脈に雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を――。
長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えた様々な思惑が交錯することによって阻まれる。
果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。、そして極寒の地に舞う恋の行方は……。
ミミズクと夜の王』『MAMA』に続く“人喰い物語”最終譚。

厳しい冬の山脈に生きる女達の激しい愛の物語。


強烈だった。
舞台の冬の山脈に降る雪氷の嵐のように、厳しく美しいフェルビエ族の女達の生き様にただただ圧倒された。 
これまでの二作品は魔物が出てきて文字通りの「人喰い」だったが、今度は人対人。それでも「喰う」という単語を使っても違和感がないほどのインパクトが彼女達の愛にはある。その愛の強さは狂気染みているがそれ以上に純粋で、美しさを感じると同時に気圧される。
欲を言うならアルテシアにもロージアやルイのような“雪蟷螂”たるところを見せて欲しかった。
彼女が中心で物語が回っていたのに、最後はルイの引き立て役のような立ち位置になってしまっている。エピローグも静かで、彼女の一番のシーンがプロローグというのがちょっと寂しい。
それでも、この作者の作品は引き込み力は相変わらず凄かった。
これで“人喰い物語”三部作は終了か。次はどんな物語を書いてくれるのか非常に楽しみ。