いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



魔王さんちの勇者さま (徳間デュアル文庫)

「魔王さんちの勇者さま」はむばね(徳間デュエル文庫)
魔王さんちの勇者さま (徳間デュアル文庫)

澄人は16歳の誕生日になった瞬間に起こされ、父親から「勇者となって世界を救え!」と言われる。まだ眠い澄人は再びふとんにもぐりこみながら、てきとーな返事をして二度寝ときめこむ。
目覚めたら、澄人は見慣れない世界にいた。そんな澄人の前に〈魔王様〉が現れた!
「我の部下になるというのならば、その命助けてやってもよいぞ」その言葉を聞いて、澄人は「そっちでお願いします」と、いうわけで、勇者のはずの澄人は魔王の手下になり、魔王の姫・サフラの付き人としての生活が始まった!
徳間デュアル文庫特別賞受賞作。

その力の強さゆえに疎まれ閉ざしてしまった魔王の姫の心を、勇者(平凡な高校生)が溶かしていくハートフルコメディ。


あらすじだけ読むと「様式美なんて知らね」のバカ小説かと思ったが、勇者が魔王の手下になるという点を除けば、奇をてらわないわかりやすいストーリー。主人公の境遇や持ち物が某バカ犬さんに似ているような気もするが性格は全くの違うので気にしない方向でw
第四章までは、幼い姫様に物語の優しい雰囲気、挿絵の雰囲気も相まって絵本を読んでいるよう。少しずつ勇者に懐いていく姫様の変化の描写が丁寧で、ついには無邪気な姿を見せてくれる様になる姫様に自然と頬が緩む。
第五章からは一転してファンタジーらしい展開に。こちらも派手さはないが優しさに溢れていてとても良かった。
大きな伏線が一つ回収されていないのが気になるが、300頁超を全く感じさせない読みやすさがあり、真っ直ぐなメッセージ性と文句なしのハッピーエンドに素直に感動できる良作だった。