いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



SHI-NO-シノ- 君の笑顔 (富士見ミステリー文庫)

「SHI-NO ―シノ― 君の笑顔」上月雨音富士見ミステリー文庫
SHI-NO-シノ-  君の笑顔 (富士見ミステリー文庫)

僕らは、どうしようもなくひとりだ。
でも、だからこそ誰かが必要なんだね。そんなこと、今更ながらに気づいた僕だけど、志乃ちゃんには全部わかっていたことなのかな。
僕らは決して一つになれないし、全てを分かりあうことなんて出来ない。
だけど――。
だからこそ、僕は君に思いを届けて見せるよ。
志乃ちゃんと一緒に、いつまでも歩き続けていたいから。
大学生の「僕」と小学5年生の志乃ちゃんとの純愛ミステリー。
信じ続けることだけが、未来への希望。


気に入らない。
馬鹿すぎる僕の行動も神様気取りの犯人の思想も。
僕は一人で何人も殺している犯人を呼び出して何をするつもりだったの? 良心に訴えれば改心するとでも思っているのだろうか? 普通に考えたらただ死にに行ってるだけにしか見えない。小説の主人公だから死なないだろうとは思ったけど、一瞬バッドエンドが頭をよぎった。
犯人はただの人間不信で肩透かしもいいところ。色々と長々と偉そうに語っているが「でもお前も人間じゃん」という感想しか出てこない。
結局のところ、殺人犯たちの口を使って妙なコミュニケーション論と人間の罪深さを語りたかっただけ? 前者は意味不明で後者は志乃ちゃんの言葉を借りれば「……陳腐」の一言。そもそも人間なんて不完全の最たるものだろうに。


・・・もうやめよ。事件の話も哲学(笑)の話も文句しか出てこないから。最終巻なんだから志乃ちゃんの話をしよう。


今回は珍しいことに志乃ちゃん視点の場面が何回か出てくる。ようやく見える彼女の本心と心の変化がなんとも切ない。でもその先に待っているものが・・・
これまでジト目の志乃ちゃんが最強だと思ってました。普段ほとんど感情を表に出さない志乃ちゃんがヤキモチという感情出す瞬間の可愛さがかなりの威力を誇ります。
しかし、最後の最後にそれを遥かに超えるもの凄い爆弾が待っていました。
まさかの笑顔。なんだこれ、凶悪すぎる。そのレア度、文章から伝わってくるぎこちなさ、これに萌えずして何に萌えればいいのか。事件の終わりとエピローグの間にあるはずの、この笑顔のきっかけのエピソードが抜けてしまっているのが非常に残念。そこが読みたいんだよそこが!
最後がこれですか?と言いたくなるところがたくさんあるけど、志乃ちゃんが幸せそうだからそれでいいか。