いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「神さまのいない日曜日」入江君人(富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)
神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫)

十五年前。神様は世界を捨てた。人は生まれず死者は死なない。絶望に彩られた世界で死者に安らぎを与える唯一の存在“墓守”。
「今日のお仕事、終わり!」
アイは墓守だ。今日もせっせと47個の墓を掘っている。村へ帰れば優しい村人に囲まれて楽しい一日が暮れていく。だけどその日は何かが違った。銀色の髪、紅玉の瞳。凄まじい美貌の、人食い玩具(ハンプニーハンバート)と名乗る少年――。その日、アイは、運命に出会った。
「私は墓守です。私が、世界を終わらせません!」
世界の終わりを守る少女と、死者を狩り続けた少年。終わる世界の中で、ちっぽけな奇跡が待っていた――。


ファンタジア大賞の大賞受賞作ということで重厚な世界観のファンタジーが出てくるかと思いきや、ライトノベルらしいライトな作品が出てきた。そういう意味では大賞らしさは感じられなかったが、その分読みやすくとっつきやすい。
アイとハンプニーの奇妙な関係を中心した笑いあり涙ありの物語で、誰かに感情移入するというよりは感情の起伏が激しく元気いっぱいなアイを見ているのが楽しい。シリアスでもコメディでもどんなシーンでもそつがないが、中でも時折入るコメディタッチの描写がとても上手いのが印象的。
ただ、隠すべき謎と一緒に必要なところまで隠してしまったようで、世界観の説明は不足気味。舞台を把握しきれず足元が覚束ないような違和感がずっと付きまとう。
と、若干気になるところはあるが基本的にはメリハリが効いた笑って泣ける良作だった。
続刊が決定済みのようだけど、この作品の2巻よりはもっとコメディ色の強い作品を読んでみたいな。



たまにしか大賞が出ないスニーカー大賞ファンタジア大賞。その大賞受賞作の題材が共に墓守とは何たる偶然。来るか?墓守ブーム!(ないないw