いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「サクラダリセット5 ONE HAND EDEN」河野裕(スニーカー文庫)

サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)
サクラダリセット5  ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)

「私を普通の女の子にすることが、貴方に出来る?」復活した相麻菫。ケイは彼女に、咲良田の外に――能力が存在しない世界に移住することを提案する。だがそれが上手くいくのか、彼にも分からなかった。確証を得るため、ケイは管理局の仕事を引き受け、春埼、野ノ尾とともに、九年間眠り続ける女性の「夢の世界」へ入る。そこでケイは、ミチルという少女と青い鳥に出会い――! “咲良田”とは? 能力とは? 物語の核心に迫る第5弾!


今までなんとなしに読んできた「リセット」の四文字が、これほど重いものになるのか。
相麻の目的や管理局のある一人の計画が明るみになる物語としての大きな分岐点であったり、野ノ尾にとってのターニングポイントでもあった5巻。でも、話の中心は一人の少年と二人の少女のどうしようもなく不器用な三角関係。さらに言えば「リセット」の春埼。
今回の春埼はいつにも増して不安定。自分に芽生えた感情に戸惑い揺れ動き、今にも壊れてしまいそうで、泣きたくなる様な緊張感があった。
そんな彼女が悩みに悩んで回り道して、他人に背中を押してもらってようやく掴んだ答えが「リセット」で消される瞬間の喪失感、いたたまれなさは凄かった。思わず「やめろ!」と叫んでしまいそうに。
なので、エピローグで相麻がいじわるで言った真実は救いに思えた。完全に無かったことにはならなかったから。それにその前に言ったケイの一言も。
今回も良かった。いつも通りの澄んだ綺麗な文章にいつもより強い儚さ、この不思議な透明感が好き。
次の話は一月後かそれより前か。文化祭の劇が是非読みたいんだけど、やってくれるかなあ。