いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「吼える魔竜の捕喰作法」内堀優一(HJ文庫)

吼える魔竜の捕喰作法 (HJ文庫)
吼える魔竜の捕喰作法 (HJ文庫)

国を守護する《魔法騎士団》を易々と蹴散らす巨大な竜。しかしそれは、一人の青年によってあっさりと倒された。あまりに強すぎるその男・タクトの正体は――皆が畏怖する竜を狩り、その肉を美味しく食べてしまう《下町の肉屋》だった! そんな彼に丸め込まれ、肉屋でバイトをさせられることになった劣等騎士の少女・シェッセの運命やいかに!?


ファンタジーらしいファンタジーで1巻らしい1巻という印象。
オーソドックスな世界観(竜の肉を食うという設定以外)で繰り広げられる人間ドラマが面白い。
自分の夢に向かってひたむきに努力する女主人公・シェッセと、無駄に強い肉屋・タクトの関係が微笑ましかったり温かかったり。シェッセが実直でウブなので、彼女のバカ正直さで起こるハプニングにハラハラ、タクトのからかいへの反応にニヤニヤ、そして何より良いのがタクトが認めてくれることによって成長している姿。
また、彼らを取り囲む人達も変態少女店主やマスコット的幼女など個性豊か。特に肉屋周辺が下町風で出てくる人たちもみんな素朴で好きな雰囲気。
一方、ファンタジーとしては初めは懐疑的だった。
肉屋強すぎで騎士弱すぎ、このパワーバランスは微妙だなぁと思いつつ読んでいたら、終盤になって伏線ラッシュ。
タクトが強い理由やシェッセの秘密が匂わされたり悪の結社まで出てきて、そこまで風呂敷を広げて大丈夫か?と思わせるほどの伏線の質と量だったが、ここまでスケールを大きくするならこのパワーバランスも納得。
今後は作中の神話と絡めてストーリーが進みそうで先が一気に楽しみになった。