いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ゴールデンタイム4 裏腹なる don't look back」竹宮ゆゆこ(電撃文庫)

ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon’t look back (電撃文庫)
ゴールデンタイム〈4〉裏腹なるdon’t look back (電撃文庫)

とある深夜、束の間だけかつての記憶が戻り、当時抱えていた想いそのままにリンダのもとへ駆けつけようとして見事にこけた多田万里。
翌朝。目を覚ました万里を待っていたのは唇を腫らし超絶ブサイクになっていた。発熱までして香子をはじめみんなの看病を受けることになるが、なぜかその流れで香子と夏に海に行く話が持ち上がる。先立つものは金! とバイトを探す万里だが、香子からは一緒にいる時間が減ると大反対され──。
かつての自分が好きだったリンダといまの自分が好きな香子。二人の狭間で揺れる、万里の心の旅路はまだ半ば?
竹宮ゆゆこ駒都えーじが贈る青春ラブコメ、第4弾!


NANA先輩胸ないなー……ではなく、


容赦なくシリアスに振ってきた4巻。
一部の記憶が戻って、前の自分のリンダへの想いを知ってしまった万里。そんな不安定な状態が、万里自信を苦しめるばかりかリンダを傷つけ、香子を傷つける。誰も悪くないのに、お互いに好きあっているのに傷つかなくてはならない状態が、切ないを通り越して痛々しい。
中でも読んでいて辛いのがリンダ。一人称の万里や素直に気持ちを吐露する香子と違い心情がはっきりと出ているわけではないが、必要以上に香子に気を使う様子や過去のエピソードを読むと大きな未練が感じられて苦しい。というか、このプロローグとエピローグは卑怯だ。本編があんななのに回想で追い打ちしなくても。
ゆゆこ先生らしいコメディはほとんどなかったけど、これでもかってくらい切ない青春は堪能した。
この悲痛な流れで次はどうなるんだろう。見て見ぬふりという最悪の選択をしてしまった万里がすぐにでも崩壊しそうで怖い。