いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「雪の翼のフリージア」松山剛(電撃文庫)

雪の翼のフリージア (電撃文庫)
雪の翼のフリージア (電撃文庫)

ここは翼をもつ人々が住まう世界。事故で翼を失った『飛翔士(ルーラー)』の少女・フリージアは、再び空を飛ぶために《義翼》職人・ガレットの元を訪れた。ガレットは、あくまで代替品の《義翼》で過酷な飛行レースに臨もうとするフリージアに呆れるが、彼女との間に『ある因縁』があったことを知り、力を貸すようになる。目標は飛翔士たちの最高峰『天覧飛翔会(グラン・ルーラ)』での優勝。果たして少女の信念は空を制することができるのか──。

『雨の日のアイリス』の作者の二作目。



前作のような泣かせる話ではなかったが、翼や空へのロマンは溢れていて、悲運ゆえに強く生きなければならなかった少女と少々無愛想な元英雄の交互視点で綴られる努力と淡い恋の物語が素敵。
どんな逆境にもへこたれない負けん気とプライドを持ちながら、その幸の薄さで応援したくなってしまうフリージアと、本当は優しいのに人の懐に踏み込むのが下手なガレット。メインの二人のいい人さが滲み出ているので、物語にスッと入っていける。
また、そんなメインの二人よりいい味を出していたのが四翼馬のブッフォン。笑いの面でもここぞの場面の活躍もこなす万能馬。まさに紳士の中の紳士。格好良過ぎて濡れる(涎で
ただ非常に残念なのが、物語が全体的に駆け足なところ。
冒頭はほとんど説明がなくいきなり会話モードに入ってしまうので、世界観や置かれている状況を理解するのに時間がかかる。
そして一番の問題はメインである天覧飛翔会が明らかな説明不足描写不足。
何人もの出場者がいるはずなのにフリージアとライバルのグロリアの二人しか出ていないような描写になっていて、そもそもずっとトラブル続きなのでレースをしているような気がしない。なのでゴールシーンの感動がイマイチ。
新人の二作目だから冒険ができないのは分からなくもないが、出来れば前後巻に分けて欲しかった。
次回作はシリーズものだと嬉しいなぁ。