いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ようこそ、古城ホテルへ (4) 〜ここがあなたの帰る国〜」紅玉いづき(角川つばさ文庫)

ようこそ、古城ホテルへ(4) ここがあなたの帰る国 (角川つばさ文庫)
ようこそ、古城ホテルへ(4) ここがあなたの帰る国 (角川つばさ文庫)

湖のほとりに建つ古城ホテル『マルグリット』にいる四人の女主人たちは、どんなやっかいごとでもあっというまに解決してしまう――。そんなうわさを聞きつけてやってきたのは、新婚ピカピカのお嫁さん!? 力を合わせて、なんとか彼女のなやみを解決してひと安心――と思っていたら、亡国の姫君リ・ルゥがとつぜんホテルをやめるなんて言いだして!? 四人の少女の、切なくも優しい友情物語、大好評シリーズ第4弾!


姫さまことリ・ルゥの当番回
わかっていたけど重苦しい。一方で、それぞれに重い過去をもつ女主人の中でも一際重いものを背負っていて、高飛車だけど義理堅くて責任感が強いリ・ルゥが納得する形で決着するにはこの形しかなかったのも分かる。
でもこれ、対象年齢が小学中級からのつばさ文庫なのよね(^^;
どちらも大事だと分かりきっていて同じ天秤にかけられるようなものではないのに、どちらかを選ばなければならない状況というのは、大なり小なり誰でも経験していくものなので、大人の方が共感出来ることは間違いない。
しかも、リ・ルゥの場合は初めての友達にマルグリットという自分の居場所と滅ぼされた母国というとてつもなく大きいもの。その簡単には選べなるはずもない葛藤の日々は重苦しく、こういう時は責任感が強い人ほど悪い方へ流れていく通例どおりに姿が痛々しい。
でも、ここまで落としたからこそ、当然のように助けに来る後の三人の活躍が映えるのもまた事実。
あっという間の救出劇だったけど、これまで友情と信頼関係を強くしてきた彼女たちだからこその一言一言が優しくて頼もしい。また、三人以上に株を上げたのが番犬ヘンリー。おっさんクサかったり空気読めなかったりでダメな子扱いな彼の活躍に胸躍ることになるとは。特に名前を叫んだシーンは痺れた。
相変わらずつばさ文庫らしからぬ痛みと切なさを持った、でもそれ以上の優しさも持った素敵な物語でした。最終回でいいようなシーンが2つもあったから、ここで一区切りなんだろうなあ。