いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女―」松山剛(電撃文庫)

白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女― (電撃文庫)
白銀のソードブレイカー ―聖剣破壊の少女― (電撃文庫)

世界の調和を保ち、力と平和の象徴とされる7本の聖剣とその使い手『剣聖』。家族を皆殺しにされた過去を持つ傭兵レベンスは、仇を探すあてなき旅の途中、その『剣聖』の一人の警護を請け負った。しかしある夜、彼らの前に小柄な少女が現れる。白銀の髪をなびかせ、その背丈にそぐわぬ大剣を操る彼女はレベンスをあっさりと退け、それ以上の腕を誇る剣聖をも討ち取り『聖剣』を強奪した。剣を交えた際、一瞬かいま見えた“映像(ビジョン)”に家族の仇の姿を見たレベンスは、その白銀の髪を持つ少女を追うが――。
一夜にして《世界の敵》となった少女と、復讐に生きる傭兵が織り成す、剣の絆の物語。


祝続刊(多分)
作者4作目にして初の続きもの。進行ペースからするとこれが上巻で、次の下巻で終わりそうではあるが。
一応バトルものの位置付けのようだが、バトルに限らず物語全体が淡々と進むので派手さは無い。
また、主人公の目的が復讐とあって過去作よりも少し暗い雰囲気だが、淋しさ切なさの中に確かな温かみがある作風はいつも通りで良かった。話が途中とあって泣くところまでは行かないが、物悲しいのにどこか優しい、でもその優しさがさらなる切なさを生む、そんな話。世界観の説明が上手いのですんなり話に入り込めるのも魅力の一つかも。
いつも通りと言えばどうしても応援したくなるヒロインも。
世界最強と謳われる『剣聖』を打ち破る強さを持つのに剣術は滅茶苦茶、戦いから離れれば無防備で無垢な少女・エリザ。“危なっかしい”を体現する可憐な少女は、あどけなさの表現が上手い挿絵の効果も相まって、庇護欲をくすぐる。仇の手掛りと割り切った考え方だったはずの主人公・レベンスが放っておけなくなるのも肯ける。
しかし、レベンスとエリザの距離が次第に近くなっているというのに、二人の原動力といい、色々と張られていった伏線といい悲しい未来しか見えない。次巻は過去作のようにまた泣かされることになるのだろうか。