いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「水木しげ子さんと結ばれました」真坂マサル(電撃文庫)

水木しげ子さんと結ばれました (電撃文庫)
水木しげ子さんと結ばれました (電撃文庫)

今日は転校初日で、学校に着いていなければいけないのに、僕は今、死体を埋める穴を掘っている。
そんな僕の左手の「ある存在」――それを追って振り返ると、僕以上に血みどろで、死体をいじくる女の子がいる。
――水木しげ子さん。
まるで人形のように完璧に美しく、けれどとても恐ろしい女の子。

でも、彼女こそ僕の「運命の人」に間違いない。だって、彼女の左手の小指は、僕の左手の小指と「運命の赤い糸」で結ばれているのだから……。
殺し合う者たちを結ぶ「赤い糸」で結ばれてしまった二人に、次々と訪れる数奇な殺し合いの「運命」の行方は――?

第20回電撃小説大賞<20回記念特別賞>受賞作品。
殺し合う者たちを結ぶ「赤い糸」が見えるようになってしまった少年と、彼と「赤い糸」で結ばれた美少女の学園サイコホラー。



微妙。
元々サイコホラーというジャンルが好みじゃないというのもあるが、全体的に中途半端に感じた。
主人公の性格が掴み切れなかったのが最大の原因か。
引っ込み思案な性格のわりに突然正義感が発動して事件に首を突っ込む。口では常識を訴えるのにしげ子さんの狂気の行動には寛容。普段は臆病なのに、目の前で人が死んでも怖がることもなければ狂うこともない。う〜ん、わからん。とりあえず読者の視点である彼の反応が大事なところで薄いので、怖さも異常性も薄れてしまっている。
それと、猟奇的な事件とは裏腹に各話の終わり方の後味が優しい。
あまりにも普通の終わり方に肩透かしを食らったようになった。狂気で突き抜けるか、読者に「えっ?」と思わせる突飛な終わり方こそが、このジャンルに求められてることじゃなかろうか。
この手の作品が好きな人には全く違った感想になるかもしれないが、そうでもない人にも読ませる魅力、例えば推薦文を書いている入間先生の『みーまー』のように、苦手なジャンルにも拘らず続きが読みたくなるような吸引力はなかった。