いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂」似鳥航一(メディアワークス文庫)

お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (メディアワークス文庫)
お待ちしてます 下町和菓子 栗丸堂 (メディアワークス文庫)

浅草の一角で、町並みに溶け込むかのように佇む栗丸堂。若い主人は最近店を継いだばかりらしく、栗田仁という。精悍にすぎる容貌で、どこか危なっかしいが腕は確かだ。
とはいえ、店の切り盛りは別物で。心配した知人が紹介したのが、和菓子のお嬢様こと葵だった。可憐な容姿だが、怪しすぎる通り名に警戒する栗田。出会いはいまいちだったが、彼女との出会いが栗田の和菓子を大きく変えることになる。
和菓子のやさしい味わいがもたらす、珍騒動の数々。下町の温かさ、そしてにぎやかさに触れるひとときをどうぞ。


人情味溢れるいい話だとは思ったのだけど、なんかちょっと違うんだよなあ。
純和風で素朴な表紙の絵柄から、下町らしい人々の機微に触れられる様な落ち着いた話だと思っていたのに、若くて元気な話だったので面食らった。
というのは、自分の勝手なイメージなので仕方がないが、それを差し引いても皆さん素直すぎ&表現が直球過ぎ。
何故見ず知らずの人の言葉を全面的に信用してしまうのか、頑固親父がこうも簡単に折れるのか。納得がいかない。
それに、昔からの悪友同士が歯に衣着せぬ言葉の応酬をしているのは良いのだが、赤の他人相手でも年配相手でもほとんど同じような口調で会話することに大きな違和感。お世辞も使わず言葉をオブラートに包むこともない会話が子供っぽくて、メインの二十歳前後の登場人物たちが、それよりもかなり幼く映った。
和菓子薀蓄には興味を引かれたけど、肝心の人間ドラマは合わなかった。