いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は」兎月山羊(電撃文庫)

ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は (電撃文庫)
ザ・ブレイカー 黒き天才、その名は (電撃文庫)

醜い人面皮をかぶり「恐怖の顔(スケア・フェイス)」と名乗る謎の男が、200人以上の学生を人質に高校を占拠する。交渉人として呼ばれたのは、重犯罪特殊刑務所に収監中の、ある少年だった――。
少年の名はカナタ。彼は、100万人の命を奪った毒ガステロに荷担したうえに、64人の刑事を殺害した罪で死刑判決を受けている「悪魔」だった。
人質を殺しながら不自然な要求を突きつけてくる凶悪な籠城犯と、他人の命に価値を見出さない冷酷な悪魔が、手に汗握る知能戦を繰り広げる……!
緊迫感溢れるクライム・サスペンス!


進んだ科学テクノロジーを駆使した犯罪をテーマにした近未来ダークサスペンス。
まずは時事ネタから発想を膨らませて構築したんだろうと思われる、フィクションでありながらリアリティのある世界観が目を引く。
その次に常に“死”に片足をつっこんでいるような極限の緊張感やオブラートのない殺害描写など、ライトノベルらしくない描写にゾクゾクする。
そこで活躍するのが、天才少年カナタと内閣情報捜査局という組織。裏の捜査組織が出てくる話(公安9課とか)が好きなのでここも大きなプラスポイント。
但し、どう読んでも知能戦・頭脳戦ではない。
駆け引きは犯人とではなく、対警察か教室内で生徒としかしてないし、犯人の要求の謎は有無を言わさずカナタが解いてしまう。まだ『アンチリテラル』(デビュー作)の方が頭脳戦をしてたような。
また後半は、次から次へ出てくるトンデモ設定に強い置いてけぼり感を感じる。二転三転する事件の様相で緊張感を増すはずが、ただの超展開になってしまっている。続きを出す予定ならもう少しゆっくりやってもよかったのに。
あらすじからの予想した内容とはかけ離れていたが面白かった。ただ、終わりはもっと丁寧にやって欲しかった。