いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「世界堂書店」米澤穂信 編(文春文庫)

世界堂書店 (文春文庫)
世界堂書店 (文春文庫)

世界堂書店にようこそ。米澤穂信が心から愛する傑作小説たちを、アメリカ、イギリス、フランスはもちろん、中国、フィンランドギリシアなどなど、世界中から選び抜きました。不思議な物語、意地悪な話、恐ろしい結末、驚愕の真相…まさに珠玉のアンソロジー
ここに詰まった小説の魔法は、あなたの心をそっと揺さぶります。


帯に「ふしぎで、意地悪で、こわくて、かなしい、小説たち」とあるけど、意地悪が強いところが米澤先生らしい。


これ外国人が書いたの!?と驚く源氏物語を題材にした『源氏の君の最後の恋』から始まり、『破滅の種子』『ロンジュモーの囚人たち』『東洋趣味』『トーランド家の長老』『石の葬式』など“後味苦め”の米澤先生が選んで納得の作品が連なる。『源氏の君の最後の恋』は注意書きの鋭いツッコミの方が面白かったりするが。
逆に、笑えないブラックユーモアから大逆転で心が晴れる『十五人の殺人者たち』、手法はアレだが基本はいい話で終わる『昔の借りを返す話』もある。
また、米澤先生の真骨頂“青春”の要素も少ないがある。『いっぷう変わった人々』は無邪気だったあの頃を、『黄泉から』は後から気付く甘酸っぱい想いを思い起こさせてくれる。内容がよく分からないが、言われてみれば青春ぽい気もする『バイオリンの声の少女』という作品も。
よく分からないと言えば、狂気の沙汰を淡々と綴る『私はあなたと暮らしているけれど、あなたはそれを知らない』は頭に?マークがいっぱい浮かぶ。『墓を愛した少年』も情景描写は美麗だが少年の行動は奇天烈だ。
まあ奇天烈ならば、突然のSFの登場に驚き、オチの映像で笑わせてくれる『シャングリラ』がNo.1だが。
と、大体どれも楽しんで読めたのだが、
ただ一つ、『連瑣』だけは読み切れなかった。訳が古すぎる。仮名遣いを現代風にしても文章が昔のままでは、古文が苦手な私には内容が全く頭に入ってこなかった。


……これで全部のタイトル出たかな?
一編一編が短いので、空いた時間にちょっと読むのに最適な一冊。