いつも月夜に本と酒

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「ブラス・オブ・シェルオール 新世響奏の姫騎士 I」是鐘リュウジ(ファミ通文庫)

ブラス・オブ・シェルオール 新世響奏の姫騎士I (ファミ通文庫)
ブラス・オブ・シェルオール 新世響奏の姫騎士I (ファミ通文庫)

名門吹奏楽部でトランペットのパートリーダーを務めるハルトは、ある日謎の光に包まれ気づけば異世界に!? なんとそこは、数曲の賛美歌しか楽曲が存在しない音楽的発展が止まった世界シェルオールだった! そしてハルトは、新しい音楽を追い求める少女リゼットと出会うのだが、この世界にはない楽曲を知る彼の演奏を聴いた彼女は大興奮! 彼こそ新時代の天才音楽家だと勘違いしてしまい――!? ふたりの音色が世界を変えるボーイ・ミーツ・ガール開演!


今流行りの異世界召喚俺TUEEE小説であるが、無双するのは戦闘力でも知識・知力でもなく、トランペット。吹奏楽部のエースだった少年が、数曲の賛美歌以外は音楽と認められない世界で、音楽の力で道を切り開いていく。
と、大きなことを書いたが、主人公・ハルト本人は音楽の才能以外は普通の文化系高校生で、主に物語を動かすのはヒロインのリゼット。
良くも悪くも何事にも前のめりなリゼットが、ハルトを含む仲間たちも読者もぐいぐいと引っ張って行ってくれるので、楽しくサクサクと読める。但し、ぐいぐい引っ張りすぎて話の流れが強引で度々不自然さを感じるのが玉に瑕(あからさまに罠な会食に嬉々として参加してからが特に)
そんな彼女が率いる響奏騎士団のメンバーも、名前のあるイリスやラナを筆頭に音楽に対する情熱と向上心のある奴らばかりで、清々しい。キャラクターの魅力は十分。
そして何より良かったのが演奏シーン。
俄然生き生きとするハルトにつられて物語のテンションが一段上がって場の空気を作り、主に演奏の奏者の心情や観衆の反応で演奏を表現する。響奏騎士団の情熱と音楽で人の心を動かす力がひしひしと伝わってきた。
ストーリーにはもうちょっとと思うところはあるが、キャラクターとメインの音楽が良いので続きにも期待したい