いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「この部屋で君と」(新潮文庫nex)

この部屋で君と (新潮文庫nex)
この部屋で君と (新潮文庫)

誰かと一緒に暮らすのはきっとすごく楽しくて、すごく面倒だ。「いつかあの人と同じ家に住めたらいいのに」「いずれこの二人暮らしは終わってしまうんだろうか」それぞれに想いを抱えた腐れ縁の恋人たち、趣味の似た女の子同士、傷心の青年と少女、出張先の先輩と後輩、住みついた妖怪と僕…気鋭の作家8名がさまざまなシチュエーションを詰め込んだひとつ屋根の下アンソロジー

ひとつ屋根の下ふたり暮らしアンソロジー



「それでは二人組を作ってください」朝井リョウ
ルームシェアしていた姉が出ていくことになり、代わりを探す女子大生。
ぎゃーーーーーー
タイトルに始まり、話の最少から最後までぼっちの傷を的確に抉ってくる恐怖の短編。下手なホラーよりも怖い。そして痛い。オチも破綻の気配しかしなくて救いがない。ひえー。
若手直木賞作家は鬼だったのか。




「隣の空も青い」飛鳥井千砂
初めての韓国出張で無口な他部署の先輩と一つ屋根の下。
なんでわざわざ韓国で嫌な思いをさせるのかと思ったらそういうことか。まあガンバレとどこまいっても人それぞれとしか言えない。
語る野口さん格好良い。三段腹でも。




ジャンピングニー越谷オサム
マンガ家の卵とプロレスラーの卵の同棲生活。
同じ夢追い人でも得てして女性の方が現実を見てしまうものなんだろうなあ。
彼女が気合を注入してめでt……あれ? え?





女子的生活坂木司
ルームシェア仲間が事情で出て行ったところに丁度転がり込んできた高校時代の友人。
男がクズ過ぎて腹が立った。
色々と問題を抱えた主人公だったのに、それに上書きされてしまった。
それと坂木氏の作品は「和菓子のアン」以外はどれも傷の舐め合いをしているようで、どうも合わない。




「鳥かごの中身」徳永圭
彼女に振られたばかりの男と、親に置いていかれた少女の交流
この手の話は居たたまれなくなるからやめて!
少女の数少ない台詞が、幼い言葉なのに彼と少女の現状を的確についてきて泣きたくなる。
ラストでちょっとホッとできるのが救いだ。




「十八階のよく飛ぶ神様」似鳥鶏
和服幼女vs巨大ムカデ
予想外に思いっきりファンタジーで、収録作品中最も陽気。
軽く楽しめて、最後にどんでん返しのおまけ付き。単純に面白い。
どんなにいい人でもその神様との同棲は嫌だなあw




「月の沙漠を」三上延
昭和初期、無口な夫婦の話。
濃く残る妹/元婚約者の死の影と、冷たく暗く映る鉄筋コンクリートのアパート。
どんより重苦しい空気の中で、妹の手紙と夫の言葉がストンと胸に落ちてきた。そして一気に胸が軽くなった。ホッとするを通り越して一種の快感。




冷やし中華にマヨネーズ」吉川トリコ
倦怠期も惰性も通り越した同棲カップ
男がクズ(以下同文
共感出来るところが全然ないので何とも言いようがない。とりあえず冷やし中華にマヨネーズなんてかけられたら殴る。
まあ、ここまで来ちゃうともうどうにも動かなくなっちゃうんだろうね。




……おい、甘い話ゼロかよ。小説でくらい夢を見させておくれ。