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「Vermillion 朱き強弓のエトランジェ」只野新人(このライトノベルがすごい!文庫)

Vermillion 朱き強弓のエトランジェ (このライトノベルがすごい! 文庫)
Vermillion 朱き強弓のエトランジェ (このライトノベルがすごい! 文庫)

硬派なゲームシステムで知られる海外産VRMMORPG【DEMONDAL】。
騎射の達人にして廃プレイヤー・ケイと、相棒のロシア人“NINJA”・アンドレイはゲームプレイ中、【DEMONDAL】そっくりの異世界に転移してしまった。不意に盗賊に襲われ、瀕死の状態に陥った相棒を救うため、ケイは単身、盗賊のアジトに乗り込む。手には朱色の強弓、“竜鱗通し”を携えて……。
応募総数2200作品から選ばれた、第二回なろうコン大賞受賞作品!


ゲームの世界にそっくりなリアルな異世界に飛ばされた二人のゲーマーの物語。
今や珍しくないどころか飽和状態にあるVRMMOを題材にした作品で、尚且つ俺TUEEEできる条件も揃っている主人公と、かなりの“流行の設定”ではあるが、その中でも一二を争うであろう硬派な作品。
最大の特長は圧倒的なシビアさ。【DEMONDAL】というゲームからして、ゲームらしいシステムアシストがほとんど存在せず、PKありアイテム強奪ありの玄人向けのゲームだったのだが、それがリアルになると輪をかけてシビアに。
中でも、目を見張るのが戦闘描写。本物の死の恐怖と隣合わせの緊張感と、血も斬られた個所もバンバン飛ぶ血生臭い描写に背筋が凍る。また、相手を倒すという行為に対してゲームとリアルの狭間で揺れ動く主人公の心理描写が印象的。
ただ、ちょっと気になるのは主人公・ケイに重点を置き過ぎてしまったのか、他のキャラクターの言動がちぐはぐ。
打算でケイたちを受け入れた筈なのに去る時に何の要求もない村長や、問題児だと強調されているのに特に問題を起こさないその息子。逃げるのか攻撃するのかはっきりしない盗賊。そして、一緒に飛ばされてきた相方の扱い。
ゲームではバリバリのファイターだったアイリーンを、完全にお姫様状態にしたのには首を捻る。アイリーン本人も面白くないだろう。
最後にその扱いを強調したところを見ると、これは仲違いのフラグ? 厳しい世界の中でふたりぼっちなのに、さらなる苦境に立たせるつもりなら、なかなかにマゾい。
諸設定の説明の意味もあってか、今のところ話のスケールが小さいので大都市に乗り込む次からが本番か。