いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「いでおろーぐ!」椎田十三(電撃文庫)

いでおろーぐ! (電撃文庫)
いでおろーぐ! (電撃文庫)

「恋愛を放棄せよ!すべての恋愛感情は幻想である!」
雪の降るクリスマス・イヴ、カップルだらけの渋谷。街の様子に僻易していた非リア充の高校生・高砂は、雑踏に向かってそんなとんでもない演説をする少女に出会った。
彼女の正体は、同じクラスの目立たない少女、領家薫。演説に同調した高砂は「リア充爆発しろ!」との想いを胸に、彼女が議長を務める“反恋愛主義青年同盟部”の活動に参加する。やがて集まった仲間とともに『バレンタイン粉砕闘争』への工作を着々と進めるのだが――!?
「我々は2月14日、バレンタイン・デーを、粉砕する!」


バカだーwwwww
全身全霊、力の限り「リア充爆発しろ!」と叫んでいるだけの作品。
話としては一昔前に流行った「変わった部活もの」そのもので、ストーリーには何も特徴はない。そのことがこの一発ネタを見事に浮き上がらせた。
彼らが声高々に謳う“反恋愛主義”は読めば読むほど支離滅裂、そもそも彼らのやっていることがバッチリ青春なので説得力もなにもない。だけど、個々のパーツのバカバカしさとそれを繋げる論法の強引さに笑わされ、一言バシッと物申す胸のすく気持ち良さがありと、コメディとしては100点。
それと、主人公の一人称というこれまた実にポピュラーな地の文なのに、これもなかなか面白い。
随所に散りばめられているぼっちネタ、非モテネタを嫌味の無い笑いに持っていくセンスと、テンパると唐突に堅い言葉使いでどうしようもないことを言い出すのだが、その時の言葉選びのセンスが光る。『議長』って言うから赤いのかと思ったが、どちらかというと昭和の学生運動の指導者みたいだな。どちらにしろラノベで使うネタじゃないなw
これは笑った、面白かった。ただの僻みを笑いに昇華した怪作、いや快作。こういうあまりのバカバカしさに単純に笑える作品は最近結構貴重なんだよね。