いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「その白さえ嘘だとしても」河野裕(新潮文庫nex)

その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)
その白さえ嘘だとしても (新潮文庫nex)

クリスマスを目前に控えた階段島を事件が襲う。インターネット通販が使えない――。物資を外部に依存する島のライフラインは、ある日突然、遮断された。犯人とされるハッカーを追う真辺由宇。後輩女子のためにヴァイオリンの弦を探す佐々岡。島の七不思議に巻き込まれる水谷。そしてイヴ、各々の物語が交差するとき、七草は階段島最大の謎と対峙する。心を穿つ青春ミステリ、第2弾。

階段島シリーズ第二弾。
クリスマスイブの慌ただしい島内の出来事を主人公・七草、一般高校生男子・佐々岡、委員長・水谷、郵便配達員・時任の四人の視点で描かれる群像劇。
ネット通販が使えなくなった原因と犯人探し、クリスマス直前になって急に噂が広まりだした階段島の七不思議の謎、当日になって大量に投函された速達のクリスマスカード。そしてクリスマスプレゼント。元々関係ありそうなものも、一見関係なさそうなものも、一つに収束して一件落着となる話の作りが綺麗。
でも、そのミステリ要素よりも、自分の目的を目指しながら葛藤する少年少女を描いた道中はもっと良かった。水谷と佐々岡の物語には、達観していると言うより枯れている主人公・七草の視点では客観的にしか見られなかった青春要素がたっぷり詰まっていた。
特に佐々岡視点。ヒーローへの憧れを語りながらも半分以上諦めている彼の様子と、そこに追い打ちをかけるようにヒーローが如何にフィクションな存在なのかを突きつけていく現実。佐々岡の憧れがとても共感しやすい分、打ちひしがれる彼の様子が切ない、痛い。一度上がりかけたところで突き落した七草は悪魔に思えた。ヒーローとはほど遠くても笑顔の結末だったのが救いだ。
次は年末刊行予定。重大な秘密を知った七草はどう動くのかが焦点になりそう。なのだけど、その前にどうもラストの告白が信じきれないんだよなあ。ミスリードだけでは説明つかないくらい時任さんの動きが怪しい。