いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん」友井羊 (宝島社文庫)

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。早朝出勤の途中に、ぐうぜん店を知ったOLの理恵は、すっかりしずくのスープの虜になる。理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。


読書メーターの「スープが美味しそう」(多数)の感想に釣られて購入。
とは言っても一編一品、短編連作形式で全五話だから五品なんでしょ?と思いながら読み始めたら、一話に二品も三品も出てくる出てくる。それだけでも嬉しい誤算だったのだけど、スープの説明は作り方から味の説明までとても丁寧で食欲をそそられるし、オフィス街の疲れた人達にホッとできる朝食をというコンセプトでやっている朝営業なので、麻野シェフの気遣いもプラスされて、食べている登場人物が羨ましくてしょうがない。
肝心の物語の方も、昨今蔓延っている日常ミステリもどきの作品とは違い、ちゃんと解決に繋がるヒントは隠されているし、少々狂気をはらんだ結末の話もあってサプライズもあったりと、ミステリとして楽しめる作りになっている。それでいて、ベースはどこまでも人間ドラマ、心の機微を読む話で実に自分好みだった。
とても良い読書時間だった。腹は減ったけどw