いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景」谷瑞恵(集英社オレンジ文庫)

異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景 (集英社オレンジ文庫)
異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景 (集英社オレンジ文庫)

図像術の絵を求めて、離島に住むブリューゲルのコレクターを訪ねた千景。絵の持ち主・波田野は、邸の庭園でブリューゲルの絵を再現しようとしているらしい。庭園を完成させれば絵を見せると言われた千景は庭園の謎を追うが、透磨はそれが千景の父・伸郎の設計だと気づく。父の見えない悪意に苦しむ千景は、さらに波田野の息子が起こした事件に巻き込まれてゆき…。

図像学という学問を修得している千景と幼馴染みの画廊の店主・透磨を中心にした美術ミステリ、第三弾。



変わらず面白かったけど結構ヘビィ。
今回は透磨の奮闘で監禁されたり攫われたり千景に直接被害が及ぶ展開にはならなかったのに、父の存在を筆頭に千景の心を抉る出来事が多くて、ハラハラ感はシリーズNo.1だった。
それでなくても幼少期の心の傷で、今でも心の自傷行為を繰り返しているような娘なのに、容赦なく追い詰めていく展開が恐ろしい。おかげで前二巻同様ミステリしていたのに千景の動向の方が気になって事件の顛末は二の次になってしまったほど。でも、これを乗り越えないと千景の人との接し方がいつま経っても変わらないだろう。頑張れ千景。
そうすれば自ずとこのじれったい恋愛模様にも変化があるに違いない。
前のラストで近付いたと思ったら次が始まると離れてるんだもんな、この二人。二人とも内心では大分素直になっていてニヤニヤさせてくれてはいるけども、それにしても牛歩だ。それでも仕舞いの距離感は少しずつ縮まているのは確かなので、次はスタートからもう少し態度が軟化してるといいなあ……無理だろなあ。



おまけで一言。
後生だから京一とかいう木偶の棒を一発殴らせてくれ!
物語を強引にでも動かしてくれる便利なキャラクターなのは分かるのだけど、あの圧倒的な小物感・デリカシーなさ・空気の読めなさ・シリアスブレイカーの全てが腹立つんじゃあああああぁぁぁぁぁーーー!
……ふぅ