いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「汚れた赤を恋と呼ぶんだ」河野裕(新潮文庫nex)

汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)
汚れた赤を恋と呼ぶんだ (新潮文庫nex)

七草は引き算の魔女を知っていますか――。夏休みの終わり、真辺由宇と運命的な再会を果たした僕は、彼女からのメールをきっかけに、魔女の噂を追い始める。高校生と、魔女? ありえない組み合わせは、しかし確かな実感を伴って、僕と真辺の関係を侵食していく。一方、その渦中に現れた謎の少女・安達。現実世界における事件の真相が、いま明かされる。心を穿つ青春ミステリ、第3弾。

階段島シリーズ第三弾。
今回は「捨てられた」人たちが住む階段島の話ではなく、「捨てた」側=現実の七草や真辺を追う物語。
現実世界での魔女の存在。「捨てられた」人たちが階段島へ至る理由。そして七草は、真辺は、一体何を捨てたのか。多くの謎が明かされて物語が佳境に入ってきたことを感じさせる一冊になっている。

もしかして君たちは二年前、中学の頃からこんな会話をしていたの?
七草と真辺の会話は、なんと表現したらいいものだろう。哲学的だったり禅問答の様に感じる時もあれば、わざと話を回りくどくしてイチャついている拙い愛の語らいに思える時もある。読んでいる分にはとても面白いし、言葉の端々にお互いへの信頼感が出ているけれど、実際にこんな話し方をする15,6歳は嫌だ。大人びているというより枯れている。
でも、それでいてお互いの「捨てたもの」だけを見ると青臭くて年相応の少年少女らしいから、思わず顔がほころんでしまうんだよなあ。
もう一人の魔女が階段島に降り立ったところで次回へ。魔女が魔女を捨てたら完全体? 彼女が奪い取るのは階段島の魔女の居場所なのか、それとも……。