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「砕け散るところを見せてあげる」竹宮ゆゆこ(新潮文庫nex)

砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)
砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)

大学受験を間近に控えた濱田清澄は、ある日、全校集会で一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃する。割って入る清澄。だが、彼を待っていたのは、助けたはずの後輩、蔵本玻璃からの「あああああああ!」という絶叫だった。その拒絶の意味は何か。“死んだ二人”とは、誰か。やがて玻璃の素顔とともに、清澄は事件の本質を知る……。小説の新たな煌めきを示す、記念碑的傑作。

混乱の極みである。



いつもの竹宮ゆゆこ作品の様な愉快さはなかったけれど、読み手を惹きつける魅力がたっぷりあった。
作者特有の軽い文体と勢いの良い台詞の応酬なのに、テーマがイジメというミスマッチが実に効果的。口調の元気の良さで出来事の陰湿さが浮き彫りになって、例えようのない凄みが出ていた。さらに、時々愉快で常に友達想いな魅力ある主人公周りのメインキャラクター達に、若者らしく生々しい心理描写の丁寧さもあって、感情移入しやすい作りになっているせいで余計に痛みが増す。
単純に面白いと形容していい様なテーマではないが、間違いなく面白かった。
で、問題の終盤。何がどうなった?
仕掛けは一人称で固有名詞を出さないごく一般的な叙述トリックなのだけど、種明かし後がごちゃごちゃしているというか、スッキリ答えを出させてくれない書き方なので読後感が悪い。「やられた」とは思っても、その後「なるほど」にはならなかった。これでは泣くに泣けない。


よく分からないから整理しよう。
以下ネタバレのため伏せ


1.冒頭は玻璃(大人)が息子に話している。
2.1章の***前までは息子(高三)が父の話をしている=人命救助して亡くなったのは清澄
3.***からがこの物語のメイン、清澄(高三)の話。
4.事件後、P293までは清澄(高三)=清澄父は離婚していただけで存命。
5.そこからはP300までは清澄(大人)で、事件後から清澄が亡くなるまで。
6.P301からはP309までは玻璃(大人)の話。1.の続き。
7.P310からは2.の続きと見せかけて父がいるから息子(高三)ではない。恐らく孫の代の話。


ってことでオーケー?
冒頭は「つまり、UFOが撃ち落された(=玻璃の父殺害)せいで(精神的に、もしくは社会的に)死んだのは二人(=清澄と玻璃)」ってこと?
愛は巡っていくって結論?
んー、しっくりこない。