いつも月夜に本と酒

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「響け!ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ前編」武田綾乃(宝島社文庫)

響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編 (宝島社文庫)
響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編 (宝島社文庫)

マーチングバンドの演奏を見て以来憧れだった立華高校吹奏楽部に入部した佐々木梓は、さっそく強豪校ならではの洗礼を受ける。厳しい練習に、先輩たちからの叱責。努力家で完璧主義の梓は、早く先輩たちに追いつけるよう練習に打ち込むが、楽器を演奏しながら動くことの難しさを痛感する。そんななか、コンクールに向けてオーディションが行われることになり……。アニメ化話題作に新シリーズ登場!


本編主人公・久美子の中学時代の友人・梓を主役にしたスピンオフ作品。
時々毒は吐いても自己主張は激しくない久美子に対して、梓はなかなかアクの強いキャラだ。
こんな子が近くにいたら息苦しく感じる人もいるだろうなと感じさせる、上昇思考の強いメンバーが集まる強豪校の中でも際立つ意識の高さ。人を依存させてしまう程の面倒見の良さ。これを人の上に立ったり面倒を見ることに快感や優越感を得ているわけでもないのにやっているのが恐ろしい。優秀すぎて人をダメにするタイプの娘で、本人がそれを一切自覚していないのが性質が悪い。
そんなしっかりしているのに危うい雰囲気を醸し出す梓が憧れて入ったのが、マーチングバンドでは全国有数の強豪校立華高校。体育会系も真っ青の厳しい練習、厳しい上下関係、厳しいレギュラー争い。そんな中で抜きに出た一年生がいるとどうなるかは火を見るよりも明らかで……。
嫉妬の渦で殺伐として重苦しい空気は本編1巻に似ているが、元々だらけてた部活のサボり癖や年功序列で荒れていた北宇治と比べると、部内の争いも激しい強豪校での人間関係の緊張感は段違い。しかも登場人物ほぼみんな女性というのが殺伐さに拍車をかける。一年生男子の太一君はよくあそこで息できるな。
爽やかで可愛らしい表紙とは裏腹に、青春小説なのに涙腺よりも胃の粘膜を刺激しそうな話だった。本編1巻といいこれといい、作者は体育会系な吹奏楽部よりも女性社会な吹奏楽部を書きたいのかな。