いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ」田代裕彦(富士見L文庫)

先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ (富士見L文庫)
先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ (富士見L文庫)

「先生にお弁当作ってもらってるとか知られるわけにいかない!」
親の入院をきっかけに壊滅的な食生活を送ることになってしまった女子高生の笈石ちとせ。そんな彼女を見かねて、学校の先生がお弁当を作ってくれることに。
その小匣先生は料理とは縁遠そうな堅物鉄面皮、なのにお弁当は絶品。喜んだのも束の間、ちとせがお弁当を自作したと言ったことが思いがけないトラブルに。さらにある秘密まで掘り起こして――。
お弁当箱の中には謎と秘密と愛情が詰まっている。お弁当が紡ぐ青春ミステリー。

料理研究家の父を持つちとせは料理がからっきし。その父の入院を機に父の料理教室に通っていた同じ学校の先生がお弁当を作ってくれることになり――という物語。
片親で料理研究家で不在、男性教諭と女子高生、トラウマにより料理が出来ない……甘々t(ry どこかで見たことある設定をちょっと弄っただけのような人物とその相関ながら、内容はしっかりミステリーしている。
主人公のちとせが持つ日常の小さな疑問や、ちとせがぶつかる人間関係の問題を、ロボメガネがあだ名の堅物教師・小匣先生が紐解いていく形で、メインとなる謎が友情愛情など人の機微を扱う話になっているのが特徴。一話二話の小さな愛憎が絡む謎解きは軽めで面白く、前二話の謎が最後の第三話に繋がっていく構成が綺麗。
また、食べている時は周りが見えなくなるちとせの性格によってお弁当の描写だけ隔離された様になっているのがもう一つの特徴。食べ物そのものの描写が濃いわけではないのに、ちとせが本当に美味しそうに食べるので胃が刺激される。
会話中心の文章とちとせの明るい性格が相まって軽く読める話ながら、ミステリの部分がしっかりしていてとても面白かった。