いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本」江本マシメサ(宝島社文庫)

長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)
長崎・オランダ坂の洋館カフェ シュガーロードと秘密の本 (宝島社文庫)

長崎の女子大学に入学した東京出身の乙女は、オランダ坂の外れに一軒の洋館カフェを見つけ、バイトをすることに。クラシカルで雰囲気たっぷりのカフェのメニューは、一日一品のデザートセットのみ。不機嫌顔のイケメンオーナーは、本業不明でやる気ゼロ。その上、雨降る夜にしか開店しないという謎システム。乙女は怪しすぎるバイトをやめようかと思うが、提供される極上スイーツに攻略され、徐々にカフェと長崎の歴史に夢中になって……。

感想は一言「甘い!」
作品を彩る……というか半分以上を占めるのが貿易地・長崎ならではの南蛮由来のお菓子たち。
バイトとは名ばかりな主人公・乙女が、バイト先のカフェのオーナーの用意したその日のメニューを堪能するのがメイン。食べるお菓子の歴史や長崎のお菓子文化の発展を解説しつつ、甘味に目がない乙女のテンション高めな食レポが食欲をそそる。
それに加えて、東京人の乙女が方言で困るシーンが度々出て来て、その言葉の意味やニアンスを丁寧に解説してくれたり、現地の人しか知らないであろう催し物や食べ物以外の長崎の歴史が出てきたりと、作品全体の7〜8割は「長崎」紹介という長崎愛に溢れた作品となっている。
残り3割弱が恋愛模様
こちらは大人しい系の女子が夢見るシチュエーションが目白押し。言葉は悪いけど、ここまで明け透けにご都合主義で妄想垂れ流しだといっそ清々しい。楽しんで書いてるんだろうなというのが伝わってきて、気付いてないのは当人同士のみという状況と「ベタだー」という思いで、二重の意味でニヤニヤしながら読める。
お菓子が甘ければ恋愛模様も甘い、最初から最後まで甘々な一冊だった。