いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「フェンリルの鎖 I」うかれ猫(HJ文庫)

フェンリルの鎖 I (HJ文庫)
フェンリルの鎖 I (HJ文庫)

様々な奇跡を起こすことが出来る『神々の遺産』を求めて旅をしている少年・カッピ。立ち寄ったエムール王国で彼が手に入れたのは、なんとエムール王国のお姫様・エフだった! 高値で売り飛ばすためにエフを保護し、共に旅をすることになったカッピだったが、旅を続けていくうちに世間を知り成長していくエフとの間には絆が育まれていき――。金にがめつい少年と、世間知らずなお姫様の凸凹な二人が『神々の遺産』を巡って冒険する、王道バトルファンジーここに開幕!!

第10回HJ文庫大賞<金賞>受賞作。



えーっと……前半分と後ろ半分が別の物語、別人が書いたみたいなんですが(^^;
世界を作り出した神々が遺した遺産に、一度はそのすべてを手に入れた常勝の魔女、それを一度は打ち破った王たち、スケールの大きな王道ファンタジー。反乱軍が王都を攻め落としたところから始まる物語は、『神々の遺産』を求める旅人カッピ、生き延びた王女様エフ、反乱軍の長ドッポの三つの視点で紡がれる。
旅の途中でカッピとエフから語られる世界観にワクワクし、またそれぞれの苦労がにじむ旅路の描写は丁寧(姫さまのキャラは頭の中があまりにお花畑で正直自分には合わなかったけど)。悪役のドッポも信念のあるキャラとして書かれ、主人公側だけの言い分で話が進まない分物語に深みが出そうな感じがした。
転機は第五章。異様に短いこの章を境に物語も人物も激変する。
突然、エフが大事になるカッピ。突然、王家の威厳に目覚め勇ましくなるエフ。こいつら誰?
そしてそこから先は完全にダイジェスト。魔女やら龍やら大狼やら見た目が派手な連中が出て来て暴れて荒らした場面だけが切り取って描かれて終わった。なんだこれ?
新人賞作品だから応募要項に納める為にシーンをカットすることは普通のことだけど、これ一番大事なところ削ってない? 第五章はもっと内容があって、二人の気持ちの転機があったはず……たぶん……きっと。(時間がなかったor飽きたの可能性もあるが)
ナンバリングしてあるということはシリーズものにするつもりなのだろうに、なんで後半急に作りが雑になったのか、困惑している。