いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「キリングメンバー 〜遙か彼方と冬の音〜」秋月陽澄(電撃文庫)

キリングメンバー ~遥か彼方と冬の音~ (電撃文庫)
キリングメンバー ~遥か彼方と冬の音~ (電撃文庫)

ある朝、学校の理科準備室で桜井夏希が殺された。当日学校を休んでいた遠藤彼方は、友人の山崎快斗から事件の話を聞き、不謹慎ながら興味を惹かれる。刑事である山本観月と柴田旭は捜査に乗り出し、被害者の父である桜井秋園もまた独自に犯人特定を急いでいた。事件が起きても日常は進む。彼方は休日に近藤此方と遊び、恋人である久保詩織と下校する。しかし、そこで観月に声を掛けられたことから事態は急転する。次々と不審死を遂げる学校関係者。連続殺人犯と連続誘拐犯。六年前に起きた凄惨な事件とその被害者。全てに関与する一人の人間。これは、謎を解き、犯人を暴く物語――ではない。

狂った大人に人生と性格を歪められた子供たちと、犯罪者に人生と性格を歪められた大人たちによる連続殺人事件。人の闇や世の中の悪意を丁寧に抽出して増幅させたようなサイコホラーっぽい作品。
帯には「この作品を電撃文庫で……!?」なんて書いてあるけど、ライトノベルでサイコホラーはそれほど珍しくもないような。むしろ言っていることは青臭いのでライトノベル向きなような。まあ殺人に対するフォローが無ければ救いも一切無いので、青少年に薦めたい本ではないけれど。
で、“サイコホラーっぽい”なのは、別に恐怖心は煽られないから。
というのも、登場人物がみんながみんな狂っていて、正常に恐怖を感じてくれる人がいないから。人死にがあっても怖がっている人がいないので、そういう世界観なんだとしか思わなかった。狂気渦巻く作品なのにすんなりと読めてしまうのはその辺りだろう。彼らの異常性を引き立たせるためにも、正常な人が欲しかったところ。
また、終わり方が尻切れトンボなのもどうかと。続きを出すつもりなんだろうか。それに終盤メインキャラが色々な疑問・違和感に答えてくれた中に一番の違和感がなかったし。結局この人たち、死体の処理はどうしてたんだろう。
良い読後感を求めるような話ではないが、そういう意味での後味の悪さは要らなかった。
怖さがないのと終いの中途半端さも相まって、題材の割に思ったほどのパンチが無かったかな。