いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「リア充にもオタクにもなれない俺の青春」弘前龍(電撃文庫)

リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)
リア充にもオタクにもなれない俺の青春 (電撃文庫)

一奈々子。オタク女子。3ヶ月ごとに「嫁」が変わるタイプの絵師。口には出さないけど、俺は密かに≪イナゴさん≫と呼んでいる。
上井恵久。リア充女子。カラオケでタンバリン叩いてた人。こっちも口には出さないけど、俺は密かに≪ウェーイさん≫と呼んでいる。
クラスこそ一緒だけど、イナゴさんも、ウェーイさんも、俺とは別世界の住人だ。きっと深いかかわりを持つことなく終わるんだろう。……そう思っていた。
あの夜、あの公園で、あんな秘密を知ってしまうまでは。オタクがメジャーになりすぎた時代。何にもなれない「俺」たちに贈る、新・青春ラノベ開幕!

リア充側とオタク側にそれぞれで仲良くなった女の子を、あたふたしながらも助けようと頑張る主人公を描く青春ストーリー。
三ヶ月で嫁が変わるオタクと、三ヶ月で彼氏彼女が変わるリア充の一体どこに違いがあるのか。最近はオタクにもついていけないよと思う、ゆるいオタクの本音が語られる。流れで静岡はdisられるw まあ事実だししゃーない。
『俺ガイル』以降、ぼっち主人公目線の肥大化したリア充像が皮肉たっぷり僻みたっぷりに書かれた作品は多数存在するけれど、同じような目をオタク側にも向け対比させるように書かれた作品は珍しいだろう。
リア充像同様にオタク像も肥大化させ過ぎた感はあるものの、そのグループに所属する為には“全肯定”しか道がない息苦しさや生き難さは良く出ていて、それに疑問を持つ主人公・リョータの意見に共感できる。
それで、それぞれのグループで弾かれそうになってしまうメグ(リア充側のヒロイン)と、ななこ氏(オタク側のヒロイン)の問題を解決するのが話のメインだと思うのだけど……
メグの問題が半分先送りなのは仕方がないと思うけど、ななこ氏の方はこれでいいのか? 会長が先生に報告すれば終わりの愚策である以上に、メグの心象が良くない=ラブコメとして不正解だと思うのだけど。
結局リョータは、メグとななこ氏の人の良さにおんぶに抱っこという印象がぬぐえないまま終わった。彼はリア充になりたかったのか、自分の思うオタクを貫きたかったのか、青春をしたかったのか。主人公としては主体性がなさすぎた。
オタクの地位を上げてリア充と並べて比べる舞台設定は興味深いものだった。しかし、ストーリーが面白かったかというと微妙。