いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ」(ファミ通文庫)

ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ (ファミ通文庫)
ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ (ファミ通文庫)

それは、明日起こるかもしれない、あなたの「if」の物語――。
「僕とキミの15センチ」をテーマに、総勢二〇名の作家が参加した珠玉のショートストーリー集。Web小説投稿サイト『カクヨム』に掲載された作品に、『バカとテストと召喚獣』の井上堅二や『“文学少女”シリーズ』の野村美月、そして『東雲侑子シリーズ』の森橋ビンゴによる「あの作品×僕とキミの15センチ」のスペシャル書き下ろしショートストーリーを加えた全二〇篇収録!

バカテスと“文学少女”の後日談も入った「僕とキミの15センチ」をテーマに書かれた二十編の短編集。ファミ通文庫4年ぶりのアンソロジー作品。
「僕とキミ」に幼馴染みの少年少女が多いのは、15センチという距離の短さの所為か、短編という縛りの所為か。15cmの使い方のバリエーションの多さに驚きつつ、各作家さんの色も楽しめてお得な一冊。
前は結構こういう企画やってくれていたのに最近はめっきりで寂しい限り。『カクヨム』効果でまた増えてくれたら嬉しいが、どうだろうか。





以下、各話毎あらすじと一言二言コメント




★は個人的お好み度。(作品の良し悪しではありません)
★★★=好き! ★★=普通 ★=あんまり 



In the Room 綾里けいし ★
気が付いたら見知らぬ部屋で見知らぬ女性にナイフを突きつけられていた人の話
ハツカネズミ的サスペンスホラー? 作者らしい作品。
明日起こるかもしれない、あなたの「if」の物語――。を謳いながら、一番起きそうにないのを頭に持ってくるのはどうだろう(^^;




十五センチ一本勝負 庵田定夏 ★★
崩れそうになったプリントを抑えようとしたことで起こるハプニング
ド直球の幼馴染みラブコメ。甘さ良し! でもお題に対してはもう一ひねり欲しかった。
勝ち負けにこだわっていたけど、プリントは落ちてるし、惚れた方が負けの法則から両方負けじゃないかな。




七月のちいさなさよなら 石川博品 ★★
蔵の中にある小さな神社で奉られるコダマサマの正体とは
あれ?普通にいい話だ。石川博品作品だから最後にぶっ飛んだオチがあるに違いないと勝手に身構えた自分の読み方が悪かった。でも爽やかな読後感は素晴らしい。




ジャンパーズ・ダイアリー 伊東京一 ★
不可解な交通事故で意識不明になった少年の正体を探る少女の話
15センチ瞬間移動することより彼女に好意が通じたことの方が奇跡だ。だって日記きm(ry
彼、目が覚めたら動悸で逝ってしまうんじゃないか?




地面から十五センチだけ浮いた程度の物語 岡本タクヤ ★★
スクールカースト最下層の二人、駄弁る。
僻み女子出雲さんのウザさがピカイチ。




華道ガールと書道ボーイのミックス展示会 くさなぎそうし ★★ 
華道ガールと書道ボーイと茶道ガールの三角関係
高校生たちの切ない青春模様かと思いきや、愛憎渦巻くどろっとした話で驚く。
華道ガールとしてはむしろここからがスタートではなかろうか? 先は修羅場しか見えない(苦笑




変わりゆく景色と変わらない約束 久遠侑 ★★★
親の転勤で離れ離れになった女の子が野球少年にした約束
嬉しさと寂しさと甘さと切なさが絶妙なバランスで入り混じった心理描写が胸を打つ。久遠先生はどうしてこうも思春期の男の子の言葉にし難い感情を表現するのが上手いんだ。最高。



Xp;15cm 九曜 ★
大学の図書館にいつもいる美人な先輩
自分も15cmと聞いて真っ先に思い浮かんだのがこれだった。詰ってるよね、色々と。
話としては主人公の男の子がヘタレで話が動かないのが不満。




甘やかなトロフィー 佐々原史緒 ★★
昔ながらのケーキ屋さんに時々やってきてホールで買っていくお得意さんの謎
佐々原さんのスポーツ少女ヒロインはやっぱいいなあ。なんかこう、元気が出るよね。
ケーキの号数って号×3cmなんだ。へー。




十五夜さんは十五センチほどズレている 更伊俊介 ★★
どこかズレた女子との放課後の教室で二人きりに
十五十五しつこいわ!w 15cmというより十五を使って遊んだ作品。
すっ呆けドS女子とツッコミ男子のやり取りは犬ハサを思い出されて楽しかった。




たった一人のお客さん 三田千恵 ★
幼馴染みの女の子の髪を切る理髪店の少年
微妙な距離感とか勇気を出しても出しきれない感じとか女の子の方は可愛かったけど、男の子のキャラが定まっていないような気がして微妙だった。




ポケットの中の女神 田口仙年堂 ★
女の子の笑顔の画像(隠し撮り)を持っていたことがバレた少年の話
いや、キモいだろ(直球) 好意があっても引きそうなんだが……。
ところでスマホってそんなに大きいのがあるの? まるで興味がないもので(^^;




金曜日は恵比寿屋に行く 竹岡葉月 ★★★
寂れた釣堀「恵比寿屋」に集める面々
恵比寿屋の秘密基地っぽさに、そこに集まるメンバーの通称がコードネームっぽくて短編とは思えない大きなワクワク感がある。そこで起こる事件から見える奇妙な仲間意識が織りなす人間模様が面白い。そして衝撃のオチ。個人的には20作中でNo.1作品。




アイスキャンディーと時を重ねる箱 羽根川牧人 ★
蔵にある一つの重箱四段目の底が明治時代と繋がっていて?
時を超えたボーイミーツガールっていいよね……と言いたいところなのだけど、15センチ四方でこのやり取りをしている図がイマイチ想像出来なくて微妙だった。オチも当たり棒以降が蛇足のような。




無事女子にフラれる、夏 御影瑛路 ★★★
イケメン声豚少年と高校生女性声優の出会い
声豚キモオタの生態を面白おかしく気持ち悪く、端的に表した作品。素晴らしい。
15cm=Cカップという発想も絶妙にキモくて、主人公の彼にピッタリ。




思春期ギャルと「小さい」オジサン 水城水城 ★★
体長15cmオジサン妖精の話
こんな素敵な妖精なら姿格好がオジサンでも別にかまわ……ないこともないこともないかもしれない。
いや、やっぱり不気味だわw




隣の○○○さん 築地俊彦 ★★
声や生活音はしても姿を見せないお隣さんの正体は?
セ○シくんじゃねーか!w
そのアイテムはずるいわ。それだけで笑ってしまうもの。
甘味なオチもいい感じ。




彼女は絵本を書き始める 森橋ビンゴ ★★
物書き夫婦の妻が絵本を書き始めた理由
「ああ、いいなあ。こんな夫婦」としみじみとさせてくれる作品。
でも、なぜ奥さんの台詞がフォント変えの鍵カッコなしなんだろうか。淡々とした口調と相まって、ちょっと幽霊っぽくておどろおどろしさがある。




僕とキミらと15センチにまつわる話 井上堅二 ★★
異端審問同窓会、開廷
名前が全部消されていても、エピソードを読めば名前も顔も浮かんでくる(異端審問会の面々は三角頭巾だけど)。バカテスのキャラクターが持つパワーって凄いわ。
……え? ■■が大学に受かったの? 嘘だ!




“文学少女”後日譚 つれない編集者と捧げるスペシャリテ 野村美月 ★★★
締切前日に1文字も書けてないとのたまう作家(Sっ気)と怒る編集者(かわいい)
甘ーい!
後日談が読めるだけでも嬉しいのにこの甘さで嬉しさ二倍三倍。
このアンソロジーの最後を飾るに相応しい極上のデザート。