いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー」友井羊(宝島社文庫)

スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
スープ屋しずくの謎解き朝ごはん 想いを伝えるシチュー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

シェフ・麻野の日替わりスープが評判のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。調理器具の購入のため麻野と出掛けた理恵は、店の常連カップルと遭遇。結婚式を控え、仲睦まじく見えた二人だが、突如彼氏が式を延期したいと願い出る。その原因は、ゴボウ? 亡き妻・静句を思う麻野への、理恵の恋も動き出す!? 美味しいスープと謎に溢れた全5話収録。心温まる連作ミステリー。


スープ屋「しずく」の日常ミステリ第3弾。
2巻で増量されたスープ成分。流石に今回は……また増えてる!? 
短編なのに一話の間に三つも四つも出てくるスープの数々。そのすべてが食材・見た目・味の丁寧な説明に始まり、そのスープの出自や健康に関する薀蓄が挟まり、飲んだ人の幸せそうな様子でしめられる。そりゃもう飯テロ力が半端ない。スープってのがずるいわ。「しずく」のような本格的なものは用意できなくても、カップスープくらいならすぐ用意できてしまうもの。夜でも問題なく飲めてしまうし。
また、各話で起こる問題や事件の方も、他人から見れば「そんなことで」と思う様な、その人が大切な人を想う時の気遣いやこだわりが見えてくる話ばかりで、スープと一緒に心が温まる。
ただ一点、不満というか首を傾げるのは、
浮気疑惑や結婚の延期、長く寄り添った夫婦の残された方の話と、どれも結婚を意識させる問題で、理恵を炊きつけるような話題だったのにも関わらず、理恵と麻野の関係にはほとんど全然進展が見られない点。ちなみに、一歩進んで二歩下がり最後に一歩進んで現状維持くらいの変化量。
これだけ周りが騒がしいのにこんなに変化がないと、もう娘の露ちゃんが何かを起こしてくれないと進展する未来が想像できないが……変化する時がこのシリーズが終わる時なのかもしれないな。