いつも月夜に本と酒

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「異世界居酒屋「のぶ」四杯目」蝉川夏哉(宝島社文庫)

異世界居酒屋「のぶ」四杯目 (宝島社文庫)
異世界居酒屋「のぶ」四杯目 (宝島社文庫)

春が訪れた古都。昼のランチ営業では「ヒガワリ」の定食を求める声が上がり、いつにも増して店は繁盛していた。ある日、連合王国からやってきた遍歴商人から貰った豆が大豆だと分かり、さらにその壺から微かに醤油のにおいがした。こちらの世界にも醤油があるかもしれないことに、ハンスの胸は高鳴った。そして夏のある日、海を越えてきた男が「のぶ」の戸を敲く。様々な縁が交錯する異世界グルメファンタジー、第4弾。

見習い料理人ハンス君の成長が著しいシリーズ第四弾。
今回はタイショーとしのぶが異世界との付き合い方を真剣に考えるシーンが散りばめられていて、いつもよりはシリアスな雰囲気。そして終盤、新たな“日本人”の登場により二人の心中は揺れ動く。でもそこはこのシリーズ、深刻な結論にならずに穏やかな読後感。依田家の複雑な行き来条件は次では忘れられてるじゃないかな。何せそういうとこアバウトだからw(単行本がずっと止まってるみたいだから次が出るのかは知らないが)
さて、今回の一押しの肴は筍尽くし。若竹煮、天ぷら、炊き込みご飯。冬頃になるとあの食感が恋しくなる。しかし四杯目はせっかく春―夏シーズンだったのに、夏らしい肴が出て来なかったのが残念だ。
話としては依田さん……と言いたいところだが、インパクトより人生の機微を味わいたいシリーズなので、やっと生まれたベルトホルト夫妻の子の方を選びたい。1巻からの常連で、色々な顔を見せてくれている思い入れが強いキャラクターなので喜びが共有できるのが嬉しい。でも三杯目の終わりに双子だって分かっているのに、なんで驚いているんだろう?(^^;