いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「夜空の呪いに色はない」河野裕(新潮文庫nex)

夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)
夜空の呪いに色はない (新潮文庫nex)

郵便配達人・時任は、階段島での生活を気に入っていた。手紙を受け取り、カブに乗って、届ける。七草や堀を応援しつつも、積極的に島の問題には関わらない。だが一方で、彼女は心の奥底に、ある傷を抱えていた……。大地を現実に戻すべく、決意を固める真辺。突き刺さるトクメ先生の言葉。魔女の呪いとは何か。大人になる中で僕らは何を失うのか。心を穿つ青春ミステリ、第5弾。

階段島シリーズ第5弾。
今回は「選択」が大きなテーマだった。
七草が、真辺が、堀が、色々な選択を迫られ、先代魔女時任が何を選択してきたかが語られる物語。(もう一人の重要人物・安達は影が薄かったけど。チラッと出て来ては嫌味だけ言う姑キャラみたくなってて苦笑い)前回で七草と真辺が別れて魔女の座を争う図式になったが、対決というよりは敵は自分といった様子。何を最優先にするのか、自分の正義はどこか、それぞれに自問自答を繰り返す。
そんなわけで、いつも以上に分かったような分からないような、納得できるようなできないような、禅問答チックな内容になっていた。七草が一時いなくなって涙する堀と真辺、帰ってきたと分かって走り出す真辺、ここに答えがある様な気がするのだが、高潔な本人たちは納得しないんだろうな。
また、彼らの選択を通じて、河野流「大人になるとはどういうことか」が語られる話でもあった。何人かが語った大人論の中では、トクメ先生論が最も納得できたかな。ただ、その方法だと正しく大人になれる人はほとんどいなさそうだけど。
そして終わりに衝撃の事実が。
七草と真辺は、というよりこのシリーズ全体として、どうしてここまで大地少年にこだわるんだろう?と今までも思ってきたし、今回は特にそう思う回数が多かったが……そういうことか! 予想外かつ残酷なところで話が繋がって、しばらく言葉を失った。
次が完結編!? 階段島の存在はどうなるのか? 七草と真辺と堀の関係は? 大地に救いはあるのか? 着地地点が全く予想できないので余計に楽しみ。