いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「錆喰いビスコ」瘤久保慎司(電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)
錆喰いビスコ (電撃文庫)

すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる“錆び風”の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救うための霊薬キノコ“錆喰い”を求め旅をしていた。
美貌の少年医師・ミロを相棒に、波乱の冒険へ飛び出すビスコ。行く手に広がる埼玉鉄砂漠、文明を滅ぼした防衛兵器の遺構にできた街、大蛸の巣くう地下鉄の廃線――。過酷な道中で次々に迫る脅威を、ミロの知恵の閃きと、ビスコ必中のキノコ矢が貫く!しかし、その先には邪悪県知事の奸計が――。
第24回電撃小説大賞《銀賞》に輝いた、疾風怒涛の冒険譚!

全てを錆びつかせる《錆び風》が吹き荒れ、文明が滅びかけている日本を舞台にした冒険活劇。
ビスコって本当にあのビスコだったのか!
名前が懐かしのお菓子だったり、操るのがキノコだったりと、所々に茶目っ気を出してくるが、基本的にはひたすら熱く雄々しく男臭い作品。作者『北斗の拳』とか『うしおととら』とか好きそうと思ったら、あとがきに案の定『北斗の拳』が出てきた。分かる人はそれで雰囲気を察してもらえれば。
荒涼とした日本を、破天荒で粗野だが情は人一倍厚いビスコと、薄幸の美少年な相貌に似合わない情熱を心に宿す少年意志ミロが、お互いの友情を育みながら、愛する肉親を救う為の薬を求めて北を目指す旅路を描く物語で、モンスターや追手との戦闘は量も質も充実していて、二人とも道中困った人がいれば助けずにはいられない性格なので、人情話が多く時代劇のテイストもある。いやどちらかというと一昔前の王道少年漫画か。悪役をとことん悪く描いているので勧善懲悪な面が強いのもそう感じる要因かもしれない。
後半の戦闘シーンがくどく感じたり(毎度ギリギリの死に掛けなのは流石に演出過剰だろう)、ところどころシーンの繋ぎが雑だったり、新人らしい荒削りなところもあるが、とにかくパワフルで荒々しく、その熱量で圧倒された作品だった。