いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「Hello,Hello and Hello」葉月文(電撃文庫)

Hello,Hello and Hello (電撃文庫)
Hello,Hello and Hello (電撃文庫)

「ねえ、由くん。わたしはあなたが――」
初めて聞いたその声に足を止める。
学校からの帰り道。中学のグラウンドや、駅前の本屋。それから白い猫が眠る空き地の中で、なぜだか僕のことを知っている不思議な少女・椎名由希は、いつもそんな風に声をかけてきた。
笑って、泣いて、怒って、手を繋いで。
僕たちは何度も、消えていく思い出を、どこにも存在しない約束を重ねていく。
だから、僕は何も知らなかったんだ。
由希が浮かべた笑顔の価値も、零した涙の意味も。たくさんの「初めまして」に込められた、たった一つの想いすら。
これは残酷なまでに切なく、心を捉えて離さない、出会いと別れの物語。


一週間毎に世界から記憶が抹消されてしまう少女と、彼女が恋した少年の恋物語
好きなタイプの作品のはずだったのだが、一切琴線に触れなかった。むしろ好きなタイプで期待したからこそ、小さい違和感が沢山ある状態を看過できなかったのかもしれない。
やりたいことは分かるけど、基本設定以外のところはもう少し何とかならなかったんだろうか。
まず最初に感じて、かつ一番大きい違和感が出会い。
毎回、全く知らない人のはずなのに初対面の彼女をすんなり受け入れる彼氏側の不自然さが際立つ。一話一話「初めまして」だから、そこを真面目に扱うと尺が足りなくなるという事情は分からなくもないが、それなら彼が一目惚れする描写でも入れてくれた方が、まだ説得力がある。
次に、彼女が置かれている状況とそれに至った経緯の説明。
絶望の色は濃いし、少女が一人で生きるには条件が厳しすぎる。彼に会う前にどうやって生きてたのか想像できない。フィクションなので金銭や就学などのリアルな面は置いておくにしても、こんなに厳しい状況で、こんなにまともな性格の子が育つだろうか? 置かれている状況と彼女の為人が合致しないのが違和感でしかない。
そしてラストの脱力感。
これまで一人で世界に抗って一生懸命生きてきたのに、それで満足なの? 無理してハッピーエンドにしろとはいわないが、なんて中途半端な……。
ちょっと不思議付きラブストーリーは大好物なはずなのに、ビックリするほど合わなかった。