いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「おっさん吸血鬼と聖女。」稲荷竜(ダッシュエックス文庫)

おっさん吸血鬼と聖女。 (ダッシュエックス文庫)
おっさん吸血鬼と聖女。 (ダッシュエックス文庫)

伝説の吸血鬼、神にさえ刃向かうという真なるバケモノ――。そう呼ばれたのも昔の話。現在の彼は、王国のかたすみ、幽霊屋敷と笑われる古城でヒキコモリ生活を送る、さえないおっさんだった。
平和で怠惰な毎日――しかし、そんな平穏はある日唐突に崩れ去る。
「おじさん、朝ですよー!」
「朝日が痛い!」
教会から来た聖女は、おじさんを吸血鬼と信じず社会復帰を笑顔で迫る!
伝説のドラゴンは犬と勘違いされ、コウモリの眷属は孫娘扱い、そして吸血鬼はヒキコモリのおじさんに。これは『吸血鬼』がお伽噺にしか出てこなくなった平和な時代。善意100%の聖女と吸血鬼との、平和なやりとりの記録である。


何百年も引き籠っているうちに同族は滅び、人の世では架空の存在となってしまった吸血鬼の王と、彼を社会復帰出来ない駄目な中年だと思い込み、社会復帰させるべく彼の城に足しげく通う聖女が織りなす日常ドタバタコメディ。
舞台はファンタジーであるが構図としては、ニートに見えて実は資産家の冴えないおじさんと、無駄にやる気ある市役所の若手職員のやり取りの現代劇。その中で今の若者文化についていけないおっさんの叫びをコミカルに描いた作品。
感想は、まあ「世知がれー(苦笑い)」しかないよね。
時折、吸血鬼の話にしみじみとした実感を感じたり、妙にリアリティを感じる時があるのだけれど、もしかして実体験? という失礼な感想が出てしまうくらい。……あ、俺がおっさんだからかw
キャラクターというか組み合わせの話をすると、真っ直ぐすぎる聖女ちゃんとのやり取りよりも、眷属(元コウモリ、無口)とのやり取りの方が好きかな。聖女に毒され気味の吸血鬼と「ちゃんとした吸血鬼」であって欲しい眷属(無口)の攻防。言葉少ななのに意志が通じてるやり取りが、ほのぼの感が強くて良かった。
あと隠れた楽しみが『二つ名』。途中から出てくる、かつてライバルだったドラゴン(現在は子犬サイズ)と共に、過去の『二つ名』がわんさか出て来て、これを追うのが意外と面白い。
笑いは主に苦笑いながらまったり気楽に読める作品だった。